「市外局番」で田舎度がわかる? 埼玉県所沢市と千葉県柏市が同じ「04」を使っている深いワケ
過激な地域ギャグで話題となった映画「翔んで埼玉」(2019年公開)でも、「宿命のライバル」として描かれた埼玉県と千葉県。
ところが、そんな両県を代表するベッドタウンの所沢市(埼玉県)と柏市(千葉県)、そして我孫子市・鴨川市(千葉県)は、隣接しているわけでもないのに、同じ「市外局番04」を使っているという。
なぜそんな不思議なことが起きたのだろうか? 自他ともに認める「番号マニア」のサイエンスライター・佐藤健太郎さんの近著『番号は謎』から、その複雑な経緯を紹介しよう。
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電話番号は「田舎度合い」の指標?
市外局番は、2桁は東京都区内(03)と大阪中心部(06)、3桁は横浜(045)、名古屋(052)、京都(075)、福岡(092)などの大都市、4桁はその他の市、5・6桁は郡部や離島といった具合に、だいたいの区分けがなされていた(なお市外局番の先頭の0は「国内プレフィックス」といい、国内通話であることを示す記号なので、厳密には市外局番の一部ではない。ただしここでは一般的な表記に従い、先頭の0を市外局番の桁数に含めている)。
このように、市外局番の桁数はその町の田舎度合いを表す指標ともなった。東京都狛江市出身の筆者の知り合いは、狛江というのは一体どこにあるのだと聞くと顔を赤くして怒り、狛江は都会だ、なぜなら市外局番が都内と同じ「03」だからだ、と力説するのが常であった。
水戸市の番号枯渇対策
しかし近年、やはり固定電話の番号枯渇対策のため、市外局番の桁数を減らして、市内局番の先頭へその数字を移す変更が行われるようになった。たとえば茨城県水戸市内の電話番号は、かつて「0292-XX-XXXX」という形であったものが、1995年以降は「029-2XX-XXXX」と変更された。
一見、全く意味のない変更のようだが、実はこれによって使える番号が大幅に増えるのである。市内局番の先頭には、0と1が使えないためだ。0で始まる番号は市外局番と認識されてしまうし、1で始まる番号は110番や119番などの特別なサービスに限定されている。先の水戸市の場合を例に取れば、市外局番の2を移すことで、今まで使えなかった029-20X-XXXXや029-21X-XXXXの番号が利用可能になる。これにより、既存の電話番号を実質上変更することなく、一挙に20万件もの余裕が作れるわけだ。
こうした変更が進んだことにより、現在では6桁の市外局番は消滅した。最後まで残ったのは北海道滝上町で、市外局番が015829、市内局番は無しであったものが、2006年3月をもって市外局番が0158、市内局番が29と改められたのだ。この改定により、市内局番無しのエリアも国内から消滅した。
「市外局番04」をめぐる複雑な事情
21世紀に入ってからは、新たな2桁市外局番として「04」が登場した。しかしこの04という市外局番はなかなかややこしく、埼玉県所沢市、千葉県の我孫子市・柏市・鴨川市などに飛び飛びに割り振られている。川崎市(044)や横浜市(045)を差し置いて、大都市の象徴である2桁市外局番がこれらの市に割り振られたのは、ちょっと不思議に思えるところだ。
実は、鴨川市の元の市外局番は0470、柏市は0471であった。前述の通り、市内局番の先頭に0と1は使用不可だから、これらの末尾1桁を市内局番に移す方法は使えない。やむなく末尾2桁を移動させ、04という2桁市外局番が誕生したのだ。なお所沢市の場合は、人口増加によって042という市外局番が満杯になったため、末尾の2を移す措置が取られた結果だ。
というわけで、同じ市外局番を用いてはいるものの、たとえば柏から所沢への通話は市外通話扱いとなるし、ダイヤルの際に市外局番の04を省くこともできない。こうした管理者の苦悩、システムの歪みの痕跡を見つけるのが、番号好きのちょっとした楽しみである、といえば少々悪趣味だろうか。
【2020年10月14日 18時30分修正】初出時に水戸市の市内局番の桁数の表記に誤りがあったため修正いたしました。