「核武装中立」に突っ走る文在寅、朝鮮戦争終結宣言で「米韓同盟」破棄へ

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よみがえる属国意識

――総じて、韓国世論は終戦宣言に冷たいのですね。

鈴置:普通の韓国人は「在韓米軍撤退」には危機感を抱きます。その延長線上にある「米韓同盟解体」への反対はもっと多い。日頃、反米的な言動を繰り返す人々の中からも、いざ同盟廃棄となれば慌てる人が続出するでしょう。

――となると、終戦宣言や米軍撤退は実現しないのでは?

鈴置:ところが、そちらに転がっていく可能性が高い。「米韓」だけを見ていると、同盟崩壊は想像できない。でも、そこに「中国」という要素を入れると、様相はガラリと変わります。

 韓国人は旧・宗主国の中国には日本人が想像もつかないほどの恐怖感を抱いている。中国が台頭するに連れ、韓国人は「そわそわ」し始めた。中国から「昔のようにこちら側に戻れ」と言われると、本当に「離米従中」を始めた。

 保守の朴槿恵(パク・クネ)政権からそれが本格化しました。左右に関係なく、韓国人は中国人に頭が上がらないのです(『米韓同盟消滅』第2章「『外交自爆』は朴槿恵政権から始まった」参照)。

 文在寅政権は2017年、中国の要求通りに「米軍のTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)配備をこれ以上は認めない、米国とはMD(ミサイル防衛網)を構築しない」など「3つのNO」を飲んでしまった。

 韓国製品の不買運動に音をあげた結果ですが、自分の国の防衛のあり方を他国に決められるというのは異常事態です。もっと奇妙なのは、それへの批判が国民からほとんど起きなかったことです。

 この点を突っ込んで聞くと、保守も含め、韓国人は「相手が中国だからしょうがない」と澄まし顔で説明します。でも、それは「我が国は未だ中国の属国」と言っているに等しい。

 ことに今、米中対立は戦争と呼んで差し支えないほどに激化した。韓国を米国から引きはがそうと、中国の韓国に対する恫喝は激しくなる一方です。韓国人がそれに耐えられるのか――。

「同盟廃棄」に伏線敷くハンギョレ

――中国のイジメが激しくなれば、韓国は完全に「離米」する……。

鈴置:韓国人の対中恐怖心が極度に高まったところで、文在寅政権が在韓米軍撤収につながる政策――終戦宣言や作戦統制権の移管に乗り出せば、左派に限らず多くの国民がしぶしぶでも賛成すると思います。今はその伏線を敷いている段階でしょう。

 ハンギョレは6月29日、「米韓同盟を打ち切れ」と主張する記事を載せました。米国の外交政策フォーカス所長のフェッファー(John Feffer)氏の寄稿「韓米同盟を見直す時期だ」(日本語版)です。

 この記事に関してはデイリー新潮「米中全面対決で朝鮮半島は『コップの中の嵐』に転落 日本の立場は」で詳しく解説しています。

 先ほど引用したキル・ユンヒョン記者も7月15日、米韓同盟の終焉を暗に説く記事を書いています。ハンギョレは米韓同盟廃棄ムードを盛り上げ始めたのです(「米中対立激化で韓国『二股外交』の限界 国論分裂の先には『核武装』?」参照)。

米国も見捨て始めた

――韓国は中立国になるのですね。

鈴置:その通りです。米国人や日本人が誤解しがちな点ですが、案外と多くの韓国人が中立化にあこがれています。左右に関係なく、知識人なら若い時に一度は中立化を考える、と言います。

 同じ民族で構成する国が南北に分かれたのも、その結果、対立する南北に独裁政権が誕生したのも、国土が大陸勢力と海洋勢力の狭間にあって双方の大国が介入して来るからだ。であるなら、中立を制度的に保障して大国の介入を防ぐしかない――との発想です。

――でも、親米保守派は中立化に死に物狂いで反対しませんか。

鈴置:それはそうです。ただ、米国に捨てられれば、親米派だってどうしようもない。実際、「中国寄りの韓国に、米軍を駐屯させる意味があるのか」との疑問が米軍の中に高まっています。

 7月17日に米陸軍大学院・戦略問題研究所が公表した報告書「An Army Transformed(変容する米陸軍)」は米国の本音を書いています。「中国の脅威に対し手を携えられるのは日本、台湾、豪州」とする一方、「韓国は状況次第」と、必ずしも信用が置けない国と位置付けました。

 そもそもこの報告書は「中国との対立激化に対応、陸軍は韓国ではなく日本やグアムに置くべきだ」とも指摘しているのです。米国が韓国から少なくとも陸軍を引く可能性が高まっているわけです(「日本への毒針? 原潜保有を宣言した文在寅政権 将来は『核武装中立』で米韓同盟破棄」参照)。

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