「核武装中立」に突っ走る文在寅、朝鮮戦争終結宣言で「米韓同盟」破棄へ
文在寅(ムン・ジェイン)政権が米韓同盟の廃棄に突き進む。先にあるのは中立化と核武装だ。韓国観察者の鈴置高史氏が朝鮮半島の展開を読む。
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米国は無視、再び終戦宣言を主張
鈴置:米韓同盟解体の伏線となる朝鮮戦争の終戦を宣言しようと、文在寅大統領が再び主張しました。10月8日、米韓交流を推進する非営利団体、コリア・ソサエティ主催の年次総会・晩餐会に送った映像で米国に呼びかけたのです。
聯合ニュースの「Moon hopes for S. Korea-U.S. Collaboration on Declaring end to Korean War」(10月8日、英語版)から引用します。
・I hope that our two countries work toward the end-of-war declaration and draw active participation from the international community in this regard.
・When we not only deter war but also actively create and institutionalize peace, our alliance will be even greater.
デイリー新潮「文在寅が国連で『同盟破棄』を匂わせ 激怒した米政府は『最後通牒』を突きつける」で指摘したとおり、9月23日にも国連で文在寅大統領は終戦宣言を主張しました。米国は直ちに拒絶しています。
朝鮮戦争は休戦状態です。もし、終戦を宣言すれば韓国を防衛する国連軍の存在意味が消滅します。北朝鮮の侵略に対抗して結成された軍隊だからです。
米軍が韓国に駐留する必要性も薄れ、米韓同盟の存続にも疑問符が付きます。在韓米軍や米韓同盟という軍事的な圧力が減れば、北朝鮮が非核化に応じる可能性はまずなくなります。
米国が終戦宣言を拒絶したのも当然です。というのに、文在寅大統領は約2週間後に再び訴えたのです。
今度は「戦争を抑止するだけではなく、平和を創り出し制度化すべきだ」と付け加えました。終戦宣言の必要性を説いたつもりでしょう。しかし、前の演説と同様に現実からかけ離れた観念論に過ぎず、またも米国から相手にされませんでした。
搦め手からも米軍撤収狙う
――執拗ですね。米国が明確に反対しているというのに。
鈴置:文在寅政権は「勝算あり」と踏んでいるのでしょう。この政権は終戦宣言と並行し「在韓米軍撤収→米韓同盟廃棄」の流れを、搦め手からも進めています。韓国軍の戦時の作戦統制権の返還です。
朝鮮戦争の勃発(1950年)以来、韓国軍は米軍の指揮統制下にあります。1994年に平時の統制権に関しては韓国側に移しました。戦時の統制権も2012年に移管する予定でしたが、韓国側の準備不足との理由で延期されています。
戦時の統制権返還を進めたのは左派の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権です。しかし次の、保守の李明博(イ・ミョンバク)政権が軌道修正し、延期を決めました。左派の文在寅政権は2022年5月の任期満了までに戦時の統制権も取り返す方針と報じられており、米国に対し早期返還をこれまた執拗に迫っています。
――統制権返還がどうして米軍撤収につながるのですか?
鈴置:韓国軍に統制権を返還すると同時に、米韓連合司令部を改組。新たに作る「未来連合司令部」の司令官は韓国側が出すことが決まっています。
一方、米軍は「小部隊を除き他国軍の指揮下に入らない」との原則を堅持しています。論理的には、返還と同時に在韓米軍は撤収せざるを得なくなります。
文在寅政権の意図は明快です。「統制権返還」と「終戦宣言」の2つの経路で在韓米軍を撤収に追い込む。すると自動的に米韓同盟も解体に向かう――との筋書きです。
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