セブンと法廷闘争、東大阪「時短オーナー」の今 「大工やウーバーやって生活してます」
24時間営業をめぐって、セブン−イレブン東大阪南上小阪店のオーナーだった松本実敏さん(59)が本部とトラブルになったのは昨年2月のことだった。松本さんは「お客様からのクレームが多い」ことを理由に、昨年12月31日をもって契約解除され閉店に追い込まれた。一躍時の人となった松本さんの今を、フリージャーナリストの角田裕育氏が取材した。
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現在、松本さんは契約解除を不当とし、解除撤回を求めて大阪地裁で係争中である。先月19日には支援団体も発足し、そこには著名弁護士や学者、ジャーナリストが名を連ねている。そうはいっても、コンビニのオーナーからすれば、契約を解除されることは、サラリーマンでいうところの「リストラ」に等しい。さぞ“お先真っ暗”の心境にあるかと思いきや……以下は10月上旬に行った松本さんへのインタビューの模様である。
客のカスハラがひどかった?
――お店を閉め、今はどういう生活をしているんでしょうか?
「蓄えを切り崩したり、ウーバーイーツ、それと工務店で大工仕事を手伝ったりしながら、なんとか暮らしています。家は以前住んでいた大きなマンションから、小さなアパートに引っ越しました。実はセブンをやる前は、親父の後を継いで工務店を経営していたんです。その時、一緒にやっていた子が今親方をやっているので『仕事があれば使ってほしい』と言ったら『ぜひ、手伝ってほしい』と。主にリフォームの手伝いですね。ただ、裁判対策などで忙しく、決まったペースで働いているわけではありません。その辺は考慮してもらっています」
――工務店を継いだのにコンビニを始めたのは、どんないきさつだったんですか?
「セブンを始めたのは2012年の時です。リーマンショックで建築関係にも影響が出ました。従業員は7、8人雇っていたのですが、給料を払うのが厳しくなっていました。最後の方は父と2人でなんとかやっていたのですが、父も歳をとってきていたし、私が腰を痛めたのもあって、続けるのが難しくなりました。何か他のことをしたいと考えていた時、『セブン-イレブン加盟店募集』のチラシが家のポストに入っていたんです。
工務店は儲かる時と儲からない時の差が激しい。嫁さんは安定収入がほしいと言っていたので、そのチラシを目にしたときは『24時間365日仕事がある』 と、むしろそれを前向きに捉えていました。話を聞くだけ聞いてみようと、加盟店説明会に行ったんです。本部の取り分が高いのを知って『何やこれ?こいつらの為に働いてるようなもんや』とも思ったのですが、『年に3、4回海外旅行に行ってるオーナーさんもたくさんいらっしゃいます』『大変な時は本部がいつでも助ける、オーナーへルプ制度があります』とかうまいことを言いますから……。それで始めてしまったんです」
――セブンのオーナーをやって、良かったことも。
「もちろんありましたよ。やはり、工務店時代と違って収入は安定していましたしね。しかもウチの店舗は、きちんと利益出してたんですよ。日販(※1日の売り上げ)60万円で、年収は700~800万円あったんです。おかげで、息子を大学まで出してやれました。とはいえ、客のカスハラ(※カスタマーハラスメント)がとにかくひどかった。もちろん良いお客さんがほとんどなんですけどね。『自由主義が行き過ぎて、わがまま主義になる』と何かの本に書いていましたが、まさにそういう事例をみたような気がします」
――セブン本部は、松本さんのお店へのクレームの多さを、契約解除の理由に挙げていました。カスハラへの対抗策として、ゴミ箱を置かなかったりとか、トイレを貸さないとか、いろいろやっていたそうですが……。
「まだトイレを開放していたころ、ウチの店で作業をしていたOFC(店舗経営相談員・本部社員)が、『トイレだけ使う人がこんなにいるの?』と呆れていました。そんな状況でしたし、工事現場の人たちがトイレの洗面台で足を洗うし、トイレに3時間もこもってゲームをする客はいるし、トイレットペーパーは持って帰るし……だからウチはトイレの使用をやめたんです。トイレを貸すのは良いんですが、節度を守って使ってくれないと、そのうちどこのお店も貸さなくなると思いますよ。
駐車場にも、無断駐車する客が沢山いた。近所にコインパーキングが沢山あるのに、ウチの店に無断駐車をするんです。いろんな対策をしたんですが、一向に改善されないんでね、警察のアドバイスで、あまりひどいものには、車のタイヤをロックして、罰金を取ったんです。まあ、罰金は少しやりすぎたかも知れませんけれど、それで無断駐車は大分減りました。
ゴミ箱も同じ。トイレを使えるのも、ゴミ箱に何でも捨てられるのも。コンビニでは何をしてもいいと、過剰サービスを許してきてしまったコンビニ本部の罪は重いですよ。せめて、コーヒー1本、おにぎり1コ買って帰ってほしい。そんなマナーの無いお客に、ウチの嫁さんは小柄な体で注意するんですよ。怒鳴り返されても毅然と立ち向かって……。嫁さんがすい臓がんで亡くなったのも、そういうストレスのせいかもしれません」
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