草彅剛「ミッドナイトスワン」は大ヒット、いよいよ本領「飯島三智氏」のプロデュース力

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各局との関係性

 フジテレビはかつて飯島派と呼ぶ向きすらあったが、「SMAP×SMAP」の生みの親で飯島氏の盟友だった荒井昭博氏(57)がBSフジ常務に転出し、現在はパイプ役と呼べる有力者が見当たらない。

 TBSは木村拓哉(47)主演の「グランメゾン東京」(2019)、テレビ朝日も同じく「BG~身辺警護人~」(2020)を放送したばかりで、両局で元SMAPの3人が復帰するとは考えにくい。メリーさんがキムタクを寵愛し、それがSMAP解散の一因になったと思われているからだ。忖度のメカニズムが働きやすいはず。

 飯島氏も香取を復帰させるならテレ東がやりやすいと考えたのではないか。学生の就職先人気でトップになるなど勢いもある。なにより、飯島氏が「アノニマス」という企画を選んだのは炯眼にほかない。

 内容が斬新なのだ。香取は主人公の刑事・万丞渉に扮するが、追うのは単純な事件ではない。ネット上の誹謗中傷や炎上で命を落とす人を救うために奔走する。

 タイムリーな企画だ。ネット問題をテーマにした刑事ドラマは本邦初。おそらく他局のドラマ制作者は先を越されたと悔しがっているだろう。香取もやりがいがあるに違いない。

 テレ東は局内でドラマの企画を募集し、300通を超える応募の中から「アノニマス」を選んだという。企画者はプロデューサーを務める濱谷晃一氏。これまでに「みんな!エスパーだよ!」(2013)「フルーツ宅配便」(2019)など話題作を次々と手掛けてきた敏腕制作者である。「警視庁ゼロ係」(2016)など犯罪ドラマの経験も豊富にある。

 飯島氏が濱谷氏に香取を託すのも的確な選択に違いない。テレビ界が絵に描いたような秀才ばかりになってしまった中、濱谷氏は高校時代の偏差値29から一浪して慶応大に入ったことを隠さず、古き良き時代のテレビマンを感じさせる制作者なのだ。

 他局ではまず作れないデリヘルの人間模様を描いた「フルーツ宅配便」を果敢にプロデュースするなど、挑戦的な面もあるので、テレビ界の掟に従ってジャニーズに忖度する気などないのだろう。

 テレ東もジャニーズとの関係が浅いわけではない。例えば9月30日に放送された「テレ東音楽祭2020秋」の司会はTOKIOの国分太一(46)が務め、ジャニーズ勢は8組も出演したのだから。

「アノニマス」が放送される月曜午後10時台は、図らずも2016年まで「SMAP×SMAP」(フジ)が放送されていた時間帯である。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月12日掲載

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