「AI社会」で中間層が消える? アメリカでは高学歴のワーキングプアが増加
ショック・ドクトリン
付言すれば、今回のデジタル庁設置について、首相に助言したひとりは、あの竹中平蔵氏と言われている。首相は小泉政権時代、総務大臣を務めた竹中氏に副大臣として仕えた経験を持ち、以来、折に触れ、“指導”を仰いできたようだが、グローバリズムでハゲタカ外資を富ませた彼の名前が出てくると、何だかぐっと政策の脂っこさが増してくるというものだ。
「デジタル化で便利になることは良い。しかし、諸手を挙げて歓迎か、といえば、やはりどこかに“ひっかかり”を感じざるをえません」
と言うのは、九州大学大学院の施光恒(せてるひさ)教授(政治学)。
「情報が一元管理されるのは便利ですが、裏を返せば、それは中国のように、IT技術やAIを使って、国民を管理、統制するシステムと同質で、それを容認する空気を社会に広げかねない。しかし、このコロナ禍において、欧米などに比べ日本で感染が拡大しなかった要因は、そうした強権的な手法に頼らずとも、多くの国民が『自粛』を行ったことに見られるような、国民の自発的でゆるやかな紐帯(ちゅうたい)にあったのではないか。その良さに気付くべきです」
そして、その紐帯をもたらしているのは、連帯意識や協調行動を生む、「極端な格差」なき社会だという。
施教授が続ける。
「『ショック・ドクトリン』という言葉がある。社会的混乱を機に、新自由主義的な政策を政府が進めることを指しますが、コロナ禍に端を発した今回の『デジタル庁』の動きもそれに似た空気を感じますね。改革だ、グローバルスタンダードだと言われれば、それに従いたくもなるでしょう。しかし一歩引いてみて、日本の強みは何かと考えてみることが大切ではないでしょうか。コロナ騒動で学ぶところが多かったのは、むしろこちらの方なのでは」
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