韓国から日本への「入国制限緩和」 「文大統領」が沈黙を続ける意味は

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反日感情を焚きつけてきたのに、国民に説明できないワケとは

 文在寅大統領が意外な沈黙を続けている。10月6日、日本政府が同月8日より韓国からの入国制限を緩和することが決まったが、関連したニュースがメディアを通じて本格的に出回り始めた先月末から、青瓦台と与党民主党はこのことに対して一切言及をしていないのだ。

 もちろん、日本の入国制限緩和の対象が韓国一国というわけではないが、文大統領の支持率上昇の重要な原動力であり、昨年の日本製品不買運動から続いた韓国国内の熱い反日感情に鑑みても、ひと言の反発、あるいは、お決まりの自画自賛もないのは訝しい。

 文大統領は9月24日、菅首相との電話会談で、特別入国の合意を歓迎し、両国関係の発展に役立つだろうという形式的な反応を示しただけだった。果たしてそれから何があったのか。そして、沈黙を守っている文大統領の本音は何なのだろうか。

 日本政府は3月5日、新型コロナウイルスの国内感染拡大を防止するため、同月9日付けより韓国からの入国者を対象に14日間の自主隔離措置を行い、これまでのビザなし入国措置、発給済みのビザの効力を停止すると発表した。

 当時、韓国政府は安倍前首相が自国に事前協議や通知なしに一方的な決定を下したとして強く反発。

 翌日には康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が冨田浩司駐韓日本大使を呼び出し、「日本が(措置を)撤回しなければ、我々も必要な対応を講じざるを得ない」と断固とした立場を表明し、強張った表情を崩さなかった。

「日本は非友好的」「露骨な入国制限強化措置を取った」

 特に当時の康長官は「日本は非友好的だ」、「露骨な入国制限強化措置を取った」などと複数回にわたり追加措置撤回を促したが、十分な協議どころか、事前通知もなかったとし、まるで日本政府が韓国だけを標的にして無理な措置を取ったとして抗議した。

 さらに韓国メディアや政界を中心に、日本が韓国国内の反日感情への報復を目的に、韓国に対してこのような制限措置を取ったという非難が続々と挙がった。

 もちろん、日本は韓国だけでなく、中国とイランに対しても同様の入国制限措置を適用した。

 菅首相(当時の官房長官)はこれに対し、韓国政府に事前通知をし、日本政府は措置発表後、韓国政府に現在の状況を丁寧に説明したと明らかにした。

 当時は日本以外にも韓国からの入国制限を実施している国もあったのだ。

 わずか7ヵ月前までは、韓国政府は日本のこのような措置に対抗し、日本製品不買運動を再燃させるほどの厳しい雰囲気だった。それほど日本による入国制限が韓国政府にとっては非常に衝撃的だったことは間違いなかった。

 だとすれば、今回の韓国からの入国制限緩和を日本から先に引き出したことは、韓国政府にとっても一つの外交成果と見ることができる。

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