八方塞がりの「文在寅大統領」 「菅首相」が取った緻密な「対韓」ポジション
初の電話会談は、「文在寅飛ばし」の予告だったのか
これに先駆けて韓国メディアは、9月16日に行われた菅首相就任後初の記者会見において、米国、中国、ロシア、北朝鮮との外交関係について発言しながらも、韓国にはひと言も触れていないことについて、「日本の極右路線の維持」、「韓国スルー」などの刺激的な表現と共に、日韓関係の改善の行方が不透明になったと報じている。
菅首相からしてみれば、韓国について言及したところで、韓国政府と現与党から『過去の歴史への謝罪』、『慰安婦・徴用工の問題の賠償要求』など、いつもの問題が蒸し返される反応が予想されたため、ノーコメントを貫くのが賢明たったのだ。
その後、ドナルド・トランプ米大統領やアンゲラ・メルケル·ドイツ首相、ボリス·ジョンソン英首相など、各国首脳らに就任の挨拶をした菅首相。
韓国メディアでは「文在寅との電話はいつ?」「今回も韓国を無視?」とクエスチョンマークが乱舞する見出し報道が相次ぎ、結局首相就任後1週間が過ぎた9月24日になって、ようやく文在寅大統領との電話会談が実現した。
もっとも、両首脳が交わした話は儀礼的なものであり、大きな意味はなかった。
菅首相は、安倍前首相が維持してきた韓国に対する外交政策を伝え、文大統領もまた、日韓の過去の歴史と徴用工賠償問題の解決に言及するに留まった。
短い会談だったが、菅首相は文大統領の要求をスルーし、日本企業の資産現金化問題について韓国側が解決策を提示するまでは敢えて会う必要なしという毅然とした態度を
示した。
八方塞がりの文大統領、当面の間は反日カードが切れない
現在、菅首相の韓国に対する態度に韓国国内では、文大統領をはじめ、政権与党が深刻かつ慎重に受け止めているという論評も出ている。
昨年の反日感情が盛り上がった時期であれば、日本の首相が韓国の大統領を無視したと受け取れる発言が出ると同時に、韓国国内で強い反発が起こっただろう。
あるいは、日本のビール缶を足で踏み潰し、繁華街でレクサスを壊し、ユニクロの前で営業妨害をするなど、「独立運動はできなかったが、不買運動はする」と、自らを慰めたかもしれない。
だが、今はまるで何事もなかったかのように静かだ。 韓国内では与党民主党内の文在寅大統領と対立し、有力な次期大統領候補とされた李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事だけが「受け入れ難い条件を掲げた菅首相が訪韓することはないだろう」と反応したのだった。
青瓦台や民主党幹部の中では、共同通信の菅首相の訪韓に関する報道について、取り立てて言及してはいない。
菅内閣は70%以上の高い支持率でスタートし、北朝鮮には拉致問題の解決に集中すると共に、韓国飛ばしを維持する。
日朝外交において、曖昧な立ち位置となった文在寅政府を揺さぶる環境がすでに出来ている。
新型コロナによる国内経済の低迷と対北朝鮮感情の悪化、支持率の下落、さらには北朝鮮の韓国飛ばしなどにより、八方塞がりの文大統領が再び反日カードを切り出せる状況ではないだけに、菅首相もしばらくは今の雰囲気を維持することが日本にも、そして日韓関係の改善を望む韓国にも実利があるだろう。
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