新生「スーパーJチャン」から考える 元番組Dが語る「テレ朝躍進の理由はここにある」

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テレビ朝日のゴールデンタイムの視聴率好調の一因になった

 日頃は結構コワモテのディレクターなのに、さすがにその時はかなりビブラートのかかった声で(つまり超震えた声で)、「ウソ!マジかよマジかよヤベエよ」と半泣きのリアル出川哲朗さん状態のレポートになっていたので、みんなで腹を抱えて大笑いしたのが今となっては良い思い出です。

 違法廃品回収業者を追跡していて、金属バットを持った人物に殴りかかられたり、「迷惑釣り人」にしつこくカメラを持って食い下がり、長い釣竿で襲い掛かられたりしたディレクターもいます。

「人って、イザとなるとこんな感じになるんだな」という、人間の真実が見られた、素晴らしい特集だったと思います。

 そうやってみんな、決定的な瞬間をカメラに収めようと体を張って頑張るテレビのプロたちの仕事に僕は感銘を受けました。

 一生懸命面白い演出を考えて、横並びのどの局にも負けないように、そして他の曜日のどのコーナーにも負けないように頑張りました。

 間違いなくあの頃、 Jチャンの特集枠が他のどの番組よりも面白かったから、Jチャンは横並び1位を獲得できたのだと思います(Jチャンの前の枠で相棒の再放送をやっていたのも非常に有利でしたが、そのことはナイショにしておきます)。

 そして、Jチャンが高視聴率を取っていたからこそ、テレビ朝日のゴールデンタイムの視聴率好調の一因になったのではないかと、ほんの少し自負しているのです。

 僕の一つ上の先輩が作る、刑務所密着シリーズなども、他局には真似できない素晴らしいJチャン特集枠の財産だと思います。

 しかし、初回の放送を見た限りでは、どうやら特集コーナーは“定期”ではなくなってしまったようです。

 初回放送なこともあってか、いろいろな独自取材のVTRを放送していましたが、ほぼその全てが「グルメ関係」と「自局の番宣がらみ」だったのは少し残念です。

Jチャンらしいハードな特集を不定期にでも出していって欲しい

 番組の終了も特集枠の終了に伴って15分前倒しになり、6時45分までとなりました。

 それが局の全体的な戦略なのでしょうから、仕方がないとも思うのですが、ぜひ今後もできるだけJチャンらしいハードな特集を不定期にでも出していって欲しいと思います。

 思えば去年10月に発覚した「やらせ事件」がきっかけとなって、特集枠を半減させてしまった事が大きかったのかもしれません。

 あれ以来なんとなくJチャンの面白さは大きく損なわれてしまったような感じがします。

 最近ではニュース枠も独自取材が少なくなって、視聴者提供素材や外電が増えました。

 しかも同じもののリピートも多くなって、他局に比べて若干「小さく大人しくまとまった」印象で、物足りない感じがするのは否めないような気がします。

 改編で時間短縮をして中身も濃くなるなら、その方が良い気もするのですが、毎日の特集枠が無くなったのはOBとして正直言って悲しいですね。

 小松靖アナウンサーは、僕はAbemaPrimeという番組でご一緒したのでよく知っていますが、非常に実力のある素晴らしいアナウンサーです。

 歯に衣着せぬコメントも評判となりましたし、僕と一緒に草創期のABEMAで前向きに新しいチャレンジをしてくれた、いわば「戦友」だと思っています。

 彼にはぜひ自由闊達に実力を発揮して欲しいですし、そんな彼の優れた能力を守り立てるためには、やはり内容の濃い取材のVTRを制作していって欲しいものです。

 小松アナのもと、硬派なニュース番組になってくれるのを期待して今後を見守っていきたいと、僭越ながらOBとして思います。

鎮目博道(しずめ・ひろみち)
テレビ・プロデューサー・演出・ライター。92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月7日掲載

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