ひとつの店が複数の「専門店」を名乗りウーバーイーツに出店 法的な問題は?
新型コロナウイルス感染対策のための「新しい生活様式」が浸透する中、料理のデリバリーサービスが盛況だ。その代表格「ウーバーイーツ」で、ひとつの店が複数の「専門店」を名乗り出店しているとSNSで話題になっている。
その投稿は、実店舗ではひとつの居酒屋にもかかわらず、ウーバーイーツ上ではからあげ、丼、カレー、ハンバーグ、寿司など8店舗の“専門店”を名乗り出店しているというもの。それぞれにはご丁寧に“それっぽい”店名が付けられており、あたかも実際にそのような店が存在するかのようである。掲載の写真は、件の居酒屋チェーンの別店舗である。〈Uber Eats配達員の方へ〉〈上記店舗はココです!」という張り紙に12軒の店名が連なっていた。うち6つは専門店とあるのが確認できる(なお、SNSに投稿された写真とは“専門店”の種類が異なる。同一チェーンでも立地によって微妙に異なるようだ)。
似たような例はほかにもある。たとえば、都内某所のカフェは「複合型デリバリー店」を名乗り、ハンバーガー、ハンバーグ、カレー、豚かつなどの「専門店」を展開(こちらはウーバーイーツではなく出前館に出店している)。ホームページには「当店が厳選した隠れた名店の商品のデリバリーを代行しています」と説明されているが、それらの“名店”の実店舗は確認できない。全て当該カフェがオンライン上で作り上げた店のようだ。
また都内の別の居酒屋は「唐揚げ専門店」を謳いウーバーイーツ上に出店。タルタルソース、明太マヨ、塩ダレ、油淋鶏ソースなど様々な味の唐揚げがメニューに並んでいる。ラインナップは確かに豊富だが、実態は単なる居酒屋である。昨今の唐揚げ専門店ブームに便乗した感が否めない。
もつ鍋を売りにしている居酒屋チェーンは「フレンチトースト専門店」をデリバリー限定でオープン。居酒屋内で作ったフレンチトーストを、配達員にピックアップさせているようだ。ただしこちらの企業は、別事業として食パン専門店も持っているようだ。
法的な問題は
このような“ゴースト専門店”は、利用者が納得できそうなものから懐疑的なものまでさまざまだが、冒頭で紹介した12店舗を展開する居酒屋は、なかなか大胆である。ウーバーイーツ上で人目に触れる機会を増やすための戦略か、“専門店”を名乗ることで品質の高さを匂わせているのか……。ならば法的な問題はないのか。景品表示法に詳しい三浦法律事務所の松田知丈弁護士は、
「『専門店』と謳うことで、一般消費者に「品質がいいもの」と認識させることになります。その店の業態や店舗の実態が『専門店』と名乗るに値しなければ、景品表示法に違反する可能性があります」
と解説する。ここでいう「一般消費者」は、この商品のターゲット層として通常想定される消費者の中で前提知識や判断能力が最も低い消費者をいう。このケースでは、ネット上では実態を大きく盛った表現がされうること等を承知でない消費者を指す。ちなみに、“味”は主観的な基準なので考慮しないとのことだ。
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