坂本勇人、通算2000本安打は通過点、張本さんを超えるには?【柴田勲のセブンアイズ】

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 巨人・菅野智之投手が大記録を達成した。6日のDeNA戦(東京ドーム)に先発し、7回を3失点で勝利投手になった。1966年の堀内恒夫に並ぶ開幕13連勝、開幕投手としてはプロ野球新記録となった。

 優勝マジックは「15」となった。今季登板試合でチームは16戦全勝、まさに大黒柱の働きだ。平成生まれ一番乗りの通算100勝にもなったが、やはり普段の努力と向上心の賜物だと思う。

 5日、桜井俊貴が8月2日の広島戦(東京D)以来、約2カ月に先発した。5回を3失点だった。先発として微妙な結果だな。月曜日でローテーションの谷間のような試合だ。原辰徳監督以下、首脳陣にすればもう少し長く投げてもらいたかったはずである。

 ストライクとボールがハッキリしていた。5回に2死から糸井嘉男を歩かせ、次打者・大山悠輔に一発を浴びた。2ボールから高めに浮いた真っすぐだった。桜井の一番の課題は勝負所での制球力だ。もっともっと制球力を磨く必要がある。

 それにしても大山、乗っている打者はやはり甘い球を見逃さない。思い切って振っている。岡本和真に並ぶ24号だ。セ・リーグの本塁打王争いを見ると、鈴木誠也(広島)、村上宗隆(ヤクルト)、丸佳浩(巨人)が20本、ネフタリ・ソト(DeNA)が19本、ジェリー・サンズ(阪神)が18本と続く。鈴木誠らがガンガン打ち出す可能性もあろうが、まずは岡本と大山の争いになってくるのではないか。

 私の見立てでは岡本が有利かな。本拠地を比べると東京ドームは本塁打が出やすい傾向にあるが甲子園はきつい。地の利である。

 それに岡本にはこれまでの実績がある。まずは焦らないことだ。阪神戦を見ていたら、振りが大きくなっていた。低めのボールを上げにいっている、フライを打とうとしているイメージだった。大山に追いかけられて一発がほしい。余裕がなくなっていた。遠くへ飛ばしたいという気持ちからか、体が反応していたのだろう。今後、相手チームの投手たちは厳しい攻めをしてくる。打撃フォームが崩れる。

 だが、6日のDeNA戦では中堅から右方向へ4安打を放った。引っ張りに入っていなかった。キッチリ修正してきた。

 ヒットの延長線上に本塁打がある。本塁打は狙って打てるものではない。そのうち出る。じっくりと構えてほしい。巨人の残り試合は28で、阪神は27。岡本24歳、大山25歳、若い2人の争いはこれからが本番、ファンにとっても楽しみだ。

 楽しみといえば、坂本勇人が通算2000本安打まであと「26」となった。残り試合は28、なんとか達成できるのではないか。

 原監督はまだ油断していないが、優勝のメドがついたり、優勝したら坂本を1番に置くことも考えられる。3番に座るよりも打席が多く回ってくる可能性がある。

 ちなみに私が通算2000本安打を達成したのは1980年8月7日のヤクルト戦、酒井圭一投手からだった。36歳だった。

 残り安打数が1ケタになってから意識したし辛かった。特にあと1本になって5試合18打席を要した。長かった。

 この時、プロ19年目だったけど、最初の1年は投手だったから実質18年で達成したことになる。(注) 坂本は今年プロ14年目の31歳、2000本安打を達成するとなると早い方だし、まだまだこれからだ。振り返ると、今季はキャンプイン前からインフルエンザに感染したし、背中の張りを訴えて満足にキャンプを過ごせなかった。

 6月には新型コロナウイルス感染の有無を調べるPCR検査で陽性反応が出て一時入院もした。開幕戦にはフル出場したものの、調整不足からか。6~8月は打率2割台で低迷した。それでも8月下旬からは調子を取り戻した。ナゴヤドームでの1試合3本塁打は記憶に新しい。同球場開設初だった。

 今季も主将としての責任感から自分を奮い立たせている。原動力にしている。

 バットコントロールに関しては巨人でNo.1だろう。丸とはタイプがちょっと違うけど前さばきがうまい。決して崩されない。技術的にも言うことはない。

 6日のDeNA戦では5回の守備から右足の張りで交代した。連戦中の疲労を考えてのことだろう。焦ることはない。通算2000本安打を達成しても単なる通過点だろう。通算安打の日本記録とくれば張本勲さんの3085本だ。高度な打撃技術とともに41歳まで現役を続けたように丈夫な身体があってのことだろう。

 遊撃は守備の負担が大きい。体調不良を抱えながらチームを引っ張っている。これからも身体に気を配り、またケアを怠らず、張本さんの記録に一歩でも二歩でも近づいてほしい。

 衝撃的なニュースが届いた。6日、ソフトバンクと首位争い真っ最中のロッテに選手ら計11人が新型コロナウイルスの陽性と判定されたという。選手は荻野貴司、清田育宏、鳥谷敬、藤岡裕大らで、すでに4日には岩下大輝投手が陽性判定を受けていた。

 6日、濃厚接触者4人を特定し、計22人を入れ替えてオリックス戦(ZOZOマリン)に臨んだが、2安打完封負けを喫した。ロッテはコロナ対策をしっかりしておりルールを守っていたと聞く。感染経路が分からないという。これがコロナの怖いところだが、とにかくできる範囲で身を守ることが大切だ。パ・リーグは現在2位のロッテが首位ソフトバンクを1ゲーム差で追っている。ロッテの残り試合は26、1軍選手の大量離脱は大きな痛手だが、15年ぶりのリーグⅤに向けてこの試練をどう乗り越えるか。注目したい。

(記録は10月7日現在)

※注(当時巨人での2000本安打達成は川上哲治氏、長嶋茂雄氏、王貞治氏に次いで4人目、プロ野球13人目だった)

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月7日掲載

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