ロッテ「澤村拓一」の好調を中央大時代の恩師が語る キーワードは“解放”と“人脈”
ロッテの澤村拓一投手(32)が、巨人時代とは見違えるような好投を続けている。9月7日に移籍すると、翌日の日本ハム戦にいきなり登板、3者連続三振で衝撃デビューを飾った。10月2日の時点で10試合に登板、許した安打は4、失点2で防御率は1・86と好調なのだ。彼が籍を置いた中央大学野球部元監督で、野球評論家の高橋善正氏に好調の理由について聞いた。
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今季の澤村は、巨人では13試合に登板し1勝1敗、防御率は6・08と低迷していた。7月末には登録を抹消。8月11日には3軍にまで落とされていた。
「澤村がトレードされる2日前、ある新聞記者に澤村と阪神の藤浪晋太郎投手について話をしていたんです。トレードでもしないと、今の状況から抜け出せないねと。そしたら、ロッテに移籍でしょう、ホントびっくりしました」
と語るのは、高橋氏。同氏は東映、巨人の元投手で、中央大学の監督を2008年~11年まで務めた。
「トレードは良かったと思います。澤村は、巨人ではトラブルがあったし、他の選手からも変な目で見られることもあった。いろいろなことから解放されて、今は伸び伸びと投げていますよ」
ロッテは、澤村にとって理想的な環境だという。
「ロッテには、中央大学の2年先輩になる美馬学投手がいます。彼は、性格がすごく良くて、みんなから慕われています。後輩への面倒見もいいので、大学時代も澤村は色々アドバイスを受けていました。また、中央大学の1年後輩の井上晴哉内野手もいます。環境的には申し分ないと思います」
ピッチャーというよりプロレスラー
巨人では、なぜ振るわなかったのか。
「なんといっても制球力ですね。巨人に入って1、2年目はまだ良かったが、その後、段々と制球力が落ちてきました。ここ数年の彼の制球力は、大学時代よりも悪かったですね。大学では筋トレばかりやっていましたが、巨人に入ってからも、続けているようですね」
制球力が落ちた理由は?
「ピッチャーは、バッターを打ち取るつもりで投げますが、澤村は全く違います。バッターを抑え込む、圧倒するという感覚なんです。ピッチャーというより、プロレスラーですよ。だから、どうしても力んでしまう。力で何がなんでも抑え込もうとする。力が入りすぎなんですね。これじゃあ、球をコントロールできません。四球を与え、ストライクを取りに行った甘い球を打たれてしまうのです」
高橋氏は、ロッテ移籍後、澤村の試合を2度見たという。
「力が入っていませんね。その分、制球が良くなっています。巨人で投げていたのより、はるかにコントロールがいい。巨人時代は、球がワンバウンドすることもありましたが、それもない。変わりましたね。ロッテに入って気持ちが解放されて、リラックスして投げています。だから制球力が上がったのでしょう」
外人のような球威
澤村の武器は、やはり球威のあるストレートだ。
「150キロ台のストレートを投げる投手は沢山います。でも、彼の投げる154、155キロのストレートは打者のバットを押し込む威力、重さがあります。外人のような球威ですね、球界ではトップクラスですよ。そんな武器となるストレートを持っていながら、力みすぎて制球力を失っていました。自分で自分の武器を殺していたのですね」
パリーグでは、このまま好投を続けられるのか。
「パリーグの打者は、ストレートにヤマを張って狙ってくるでしょうから、甘い球が行けば打たれます。いずれ何らかの対策を考える必要がありますね」
澤村は、投球の組み立てが上手くないといわれている。
「投球の組み立て以前に、彼は制球力がなかったから、投球の組み立てなんかできなかったんですよ。まずは、制球力を今以上に磨くことですね。そして変化球です。彼は、外角に決まるいいスライダーを持っていますから、スライダーでカウントを取れるようになれば、鬼に金棒でしょう。最後にストレートか高速のスプリットで決めればいいのです。そこまで出来るようになれたら、抑えのエースとしても現実味を帯びてきますよ」