「安倍前総理」広告塔の巨額詐欺「ジャパンライフ」 退陣を待っての逮捕か

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 被害者延べ1万人、被害総額2100億円。「ジャパンライフ」の詐欺事件では山口隆祥元会長(78)を含めた幹部14名が逮捕されたが、そのタイミングをめぐり、“安倍さん退任まで待ったのか”との見方が消えることはなさそうで……。

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〈安倍晋三内閣総理大臣から山口会長に「桜を見る会」のご招待状が届きました〉

 と、宛名入りの招待状を見せられては、それまで訝しげに話を聞いていた人々もコロッと信じ込んでしまったに違いない。被害者の大半は60歳以上の高齢者である。ジャパンライフは老後資産の不安などに付け込んで巧みに勧誘し、人生をかけて築いた資産を根こそぎ奪い取ったのだ。

 45年前、1975年に設立された同社は、中曽根大勲位や山口敏夫、塩川正十郎といった大臣クラスに取り入ってその関係を誇示、客の信頼を得てきた。

 全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会代表の石戸谷豊弁護士によると、

「安倍前総理の父、晋太郎元外相と山口元会長が一緒にニューヨークを訪問したこともあります。また、消費者庁のジャパンライフの検査の担当者や朝日新聞政治部長までも顧問にした。悪徳商法において百戦錬磨の山口元会長は、政治に限らず、役所やメディアをも抱き込んで生き延びてきたのです」

逮捕時期は調整可

 そんな山口元会長の元に届いたとされる2015年の「桜を見る会」の招待状。利用しないわけがない。全国紙の社会部デスクが言う。

「安倍前総理は国会で、“山口元会長との面識はなく、名簿は廃棄されたため、なぜ招待状が送られたのか分からない”と苦しい弁明に終始しました。退任していなければ、国会でずっと追及されたでしょう」

 安倍総理退任は9月16日。警視庁と愛知など5県警の合同捜査本部がジャパンライフ幹部の一斉逮捕に踏み切ったのは2日後の18日だ。

「菅内閣発足直後でメディアの取材も分散されました。なにより、国会が閉じているので追及されることがない。逮捕は、安倍前総理にとってはこの上ないタイミングだったわけです。ジャパンライフは4年前から4回も消費者庁の行政処分を受けていましたし、2年前には東京地裁が破産手続き開始決定をしています」

 昨年2月に合同捜査本部が立ち上がり、

「昨年4月には、山口元会長宅など12都県30カ所の一斉捜索が済んでいました。つまり、それまでの蓄積があり、7月以降はいつでも立件できる状態でした。逮捕を9月18日まで待たなければいけない理由はなかったのです」

 元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士も、

「逮捕の時期というのは、実は、調整すれば1カ月程度、前後させることはできます。本件では検察側との調整もあったでしょうけれど、8月中の逮捕も可能だったはず。ですが、コロナ禍の対応に追われ、安倍さんの体調が悪化している状況下で後ろから弓を引くような事態を避けたという面はあったと思います」

 しかも霞が関官僚のトップ、内閣官房副長官は元警察庁キャリアの杉田和博氏だ。新旧政権への忖度。遅すぎた逮捕に憤るのは1万人の被害者だけではあるまい。

週刊新潮 2020年10月1日号掲載

ワイド特集「うまい話には裏がある」より

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