“やさぐれ探偵”ドラマ「天使にリクエストを~」のポイントは3つ
「傷だらけの天使」オマージュでもある
NHK土曜ドラマ「天使にリクエストを~人生最後の願い~」で、「死んだように生きている」元刑事を好演する江口洋介。昭和の時代に皆が胸をときめかせた、この「やさぐれ探偵」ドラマのポイントは3つあるという。
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余命いくばくもないとわかった段階で、死ぬ前に会いたい人に会い、行きたい場所へ行き、やっておきたいことを実現するのは相当難しい。
最も高い壁は「責任の所在」だ。本人の意志があったとしても、家族が許さない。
家族が求めたとしても、医療体制が整わないと許されない。
容体が急変したときに最善を尽くせるかどうかを考えると、病院や自宅以外の場所へ行くのはかなりハードルが高い。
人権の尊重、個人の権利よりも、倫理観と法律が優先されるのが現状だ。
しかも、願いそのものが「雲をつかむような」もので、素人では到底たどり着けない「人探し」要素を含んでいたら?
元刑事のやさぐれた探偵が金に釣られたものの、人々の最期に寄り添うことで心洗われていくのが「天使にリクエストを~人生最後の願い~」だ。
個人的に、ドラマタイトルに「天使」だの「神様」だの「運命」だのと入っていると「絵空事と綺麗事でお涙頂戴かな……」と斜に構えるクセがある。
このドラマも一瞬そう思ったのだが、どちらかといえば堕天使のほうであり、「傷だらけの天使」オマージュでもあると気づき、襟を正した。
主役の探偵・島田修悟を演じるのは江口洋介。浮気調査などで糊口をしのぐも、飲み屋のツケはたまる一方。
アシスタント・小嶋亜花里役の上白石萌歌は有能な銭ゲバだが、事務所は赤字で、廃業の危機に瀕している。
江口が抱えている凄絶な過去
そこに現れたのが、何やら謎めいたご婦人・佐藤和子(倍賞美津子)。
300万円の小切手をポーンと出して、「ある女性の願いをかなえてほしい」という。
その女性・大松幹枝(梶芽衣子)は末期がんで肺や骨にも転移し、喘息も併発。
とても外出できる状態ではないが、「60年前、子供を捨てた富士宮の養護施設に行きたい」という。
倍賞はヨーロッパで緩和ケアを学んだ訪問看護師・寺本春紀(志尊淳)も同行させ、反対する医師(矢島健一)を説き伏せ、江口と上白石に託す。
ところが、梶の願いはそれだけでは終わらなかった。「捨てた子供にひと目会いたい」と手がかりになる新聞記事を出す。
そこに書かれていたのは銃撃事件で逮捕された暴力団員の名前だった。
昭和の時代に皆が胸をときめかせた「やさぐれ探偵」モノ、突飛な依頼から事件に巻き込まれるパターン。
ありがちといえばありがちなのだが、ポイントは3つ、と思って観ている。
ひとつは、江口が抱えている凄絶な過去だ。
刑事時代に、自分の不注意から息子を死なせてしまい、妻(板谷由夏)とは離婚。
偶然が重なった悲劇は防ぎようもなかったのだが、罪悪感と喪失感で押しつぶされ、江口は酒に逃げている。
ふとした瞬間やなにげない言葉でも息子を思い出してしまい、涙を隠すために酒を浴びるように飲む。
まるで「死んだように生きている」男でもある。
やさぐれた江口の言動はどこか自暴自棄で、「自分なんかいつ死んでもいい」と思っているフシもある。
その根っこには深い悲しみと自責の念があり、心根の優しさも伝わる(劇中、江口が結構泣くのよ、深みのあるいい表情で)。
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