コロナ禍に「ノブコブ徳井」の仕事が増えた理由 「客ウケしない」笑いが武器に
芸人への「嫉妬」がない
――そんなふうに言える吉村さんの素直さも素敵です(笑)。先ほどの「他の芸人さんへの嫉妬が一切ない」ということについて、もう少し詳しく教えて下さい。
(徳井) 同期に「ピース」や「NON STYLE」がいますし、この世界に入ってすぐ、「自分よりも面白い人だらけ」という事実に打ちのめされました。芸人をやめようと思ったくらいで、芸歴0年目に嫉妬はなくなったんです。
しかも、千原ジュニアさん、小籔千豊さん、劇団ひとりさんといった先輩芸人さんとお会いすると、もう面白さの桁が違う。悔しさや憧れを抱くのもおこがましいくらいのレベルの差を感じました。で、諦めた。160キロの球を投げられるピッチャーがいる事実に、どう頑張っても120キロしか出ない自分は、競っても無駄と悟るしかありませんでした。
ただ、そこから僕の「分析癖」は始まったのかもしれません。
数字化されない「お笑いの面白さ」について、何がどう優れているから面白いのか、構造から考えるようになったことが、きっと今、見ている方に面白いと思ってもらえる「分析」につながっているのかも。
20年分の「分析ストック」を開放
――そんな鋭い批評眼と卓越した分析力、そして強いお笑い愛が感じられるコラム「逆転満塁バラエティ」がスタートします。書籍『この素晴らしき世界』で吉本芸人さんの奇人変人ぶりを綴った東野幸治さん本人から、後任として指名されたと聞きましたが。
(徳井) 聞いた当初は驚きました。でも光栄ですし嬉しかったです。連載第1回目は、その東野さんをテーマにさせて頂きました。僕が知る限りのことになりますが、結構好き勝手書かせて頂いています。
もともと文章を書くことは好きなので、連載をすること自体はまったく苦でなくて。「文章を書く仕事がしたい」と会社にはずっとお願いしていて、吉本の有料携帯サイト「ライブよしもと」で「ブラックホールロックンロール」を10年以上連載していたり、小説を書かせてもらったりしたこともあります。本は売れなかったんで申し訳ないのですが(笑)。
――2012年に読売新聞に掲載された、子育てを通じて人種差別について考えたコラムは特に秀逸でした。この後はどんな芸人さんを書かれていく予定ですか?
(徳井) 偉大なる先輩方――小籔さん、加藤浩次さん、千鳥さんや、相方の吉村、それに渡辺直美やEXITなど後輩芸人についても書きたいですし、話したことのない芸人、例えばコウテイなんかも書いてみたい。
「笑っていいとも!」の最終回といった芸人以外をテーマにすることもできるし……いくらでも書けます、なんせ20年分の「分析ストック」があるので(笑)。
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