オリラジ中田「YouTube大学」の罪 「芥川賞・直木賞の問題点」はヒドすぎる

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賞は書店の敵!?

 中田は9月9日と10日の2日間にわたって、書店や取次、出版社の問題点を指摘する動画を配信した。前出の記者が言う。

「『書店業界の危機』として、2本の動画が配信されました。1本目が『スマホが書店の主力商品を駆逐』、2本目が『書店員のジレンマと未来への提言』でした。しかし、この動画も内容に事実誤認があると出版関係者の間で問題視されているのです」

 2本の動画における事実誤認を全て指摘すると、いくら紙幅があっても足りない。

 今回は「芥川賞・直木賞・本屋大賞」に関する中田の解説や指摘が、どれほどいい加減なのかご紹介したい。

 動画で中田はどんな解説を行ったのか、ポイントを箇条書きでまとめた。もちろん間違いがあっても、そのまま掲載した。

【1】本屋大賞は、芥川賞と直木賞に対する書店の不満から設立された。

【2】芥川・直木賞は書店の味方というイメージがある。又吉直樹(40)の芥川賞受賞作『火花』(文春文庫)も、芥川賞を受賞したことで売れたはずだ。

芥川・直木賞の主催は雑誌!?

【3】だが、芥川・直木賞の受賞作が発表されてから書店へ行くと、「まだ単行本は出版されていません」と言われることが多い。

【4】芥川・直木賞は書籍の売上げ増加を目的としていない。「文藝春秋」や「新潮」、「すばる」といった文芸誌を売るために開催されている。

【5】受賞のニュースを見て本屋で「『火花』はどれですか?」と聞くと、「『火花』の単行本は出ていません、『文藝春秋』を買ってください」と言われた記憶はないだろうか。

【6】「文藝春秋」は買えても、単行本は買えない。これで抗議が書店に殺到する。芥川・直木賞で書店が利益を得られないのは、両賞を主催しているのは《雑誌》だからだ。

【7】本屋大賞は書店で既に売られている単行本から選ばれる。ただし、本屋大賞は書店員全員が選ぶというイメージがあるが、選考委員の数は300人に過ぎない。

【8】本屋大賞は「売れている本を売る」賞。ベストセラーのランキングに載るような本で、在庫があるものを選び、本屋大賞の大賞から10位までのベスト10として発表する。

「文藝春秋」は文芸誌!?

 最初は単純なミスから指摘しよう。「芥川・直木賞は文芸誌のために開催されている」というくだりだ。

 動画で中田が名指しした《「新潮」とか「すばる」とか》は文芸誌だが、「文藝春秋」は文芸誌ではない。普通は総合月刊誌と分類される。

 次は【3】と【4】が正確かどうか、チェックしてみよう。もう一度、掲載しておく。

【3】だが、芥川・直木賞の受賞作が発表されてから書店へ行くと、「まだ出版されていません」と言われることが多い。

【4】芥川・直木賞は、「文藝春秋」や「新潮」、「すばる」といった文芸誌を売るために開催されている。

 まず芥川賞から始めよう。この賞は「純文学の新人に与えられる文学賞」と定義される。初出が文芸誌であるケースは圧倒的に多い。特に知名度の高い文芸誌を列挙しておこう。

「群像」(講談社)、「新潮」(新潮社)、「すばる」(集英社)、「文學界」(文藝春秋)、「文藝」(河出書房新社)──この5誌が代表格だ(註:雑誌名は五十音順に並べた)。

受賞前に単行本化の事実

 もちろん、この5誌に限るわけではない。2013年1月に芥川賞を受賞した黒田夏子(83)の『abさんご』(文藝春秋)は初出が「早稲田文学」(早稲田文学会)だ。

 しかし、5誌以外から選ばれることは珍しいのも事実だ。中田が具体例として挙げた『火花』の場合、初出は「文學界」になる。2015年1月7日に発売された2月号に掲載された。

 6月19日に『火花』は芥川賞候補となり、7月16日に受賞が発表された。羽田圭介(34)の『スクラップ・アンド・ビルド』(文春文庫)と同時受賞だった。

『火花』の場合、3月11日に単行本が出版されている。芥川賞にノミネートされる前から話題となり、既にベストセラーとなっていた。

 当時の報道を振り返ってみよう。毎日新聞は6月1日の夕刊に、以下の記事を掲載した。

「特集ワイド:『又吉現象』を読み解いた 『お笑い』なのに寡黙、『愛した本』は売れ行き数倍」

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