「半沢直樹」監督の“パワハラ気質”で脱落者が続出 放送延期の本当の理由は…

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監督の“パワハラ気質”に脱落者が…

 ところが、名脚本家との蜜月は突然終わりを迎える。

「最終的には伊與田プロデューサーの判断で、八津さんは半沢続編に関わらないことになった。3人の間に何があったのかさまざまな臆測が飛び交いましたが、“一緒にやってきた功労者を平気で切り捨てるのか”“半沢続編は大丈夫なのか”と、疑問の声が上がりました」

 理由のひとつに、福澤監督らの制作手法があるのではないか。そう指摘するのは、さる制作会社のディレクターである。

「福澤監督は根っからの現場好き。悪意があるわけではないと思いますが、パワハラ気質な面があるのは否めません。台本は伊與田プロデューサーと脚本家で土台を築く。その後、福澤監督が細部をチェックして作り上げていくスタイル。監督もプロデューサーも脚本家を缶詰にして、これじゃダメだと何度も突き返して、TBSの本社などに1週間居残らせることもザラです。脚本家として自我が芽生えた八津さんも、耐え切れず不協和音が生じたのでは」

 今回の半沢続編でも、過去の池井戸作品を手伝った別の脚本家を中心に、若手など数十人が起用されたが、

「厳しい監督とプロデューサーの書き直し要求に耐えたのはわずか数人で、他は脱落してしまいました」(同)

 まさに半沢の世界を地で行くサバイバルが、制作現場では展開されていたのだ。

 当の八津氏に話を聞くと、

「今回の半沢には全く絡んでいないので……。それはなんともお答えがしづらいところです。局や事務所を通して貰えますか。申し訳ありません」

 そう繰り返し、困惑するばかりだったのである。

「放送中止は前代未聞」

 同じくTBSのドラマ「渡る世間は鬼ばかり」で、名プロデューサーの石井ふく子氏とコンビを組む脚本家の橋田壽賀子氏は、

「『半沢直樹』のような原作モノは、絶対やらないって決めているんです」

 と口を切った上で、その理由をこう語る。

「やっぱり原作モノは大変ですよ。面白くても褒められるのは原作者だし、ヒットしなければ責められるのは脚本家。どうしても原作ありきになるから、やりたくない。過去に手掛けたことはありますが、石井さんから“原作の通りにやって”“こう直して”って命じられ、ケンカしながらやっていました。私も彼女のおかげで世に出られたから、足を向けて寝られませんが」

 さらには、今回のように撮影が遅れて放送が止まるのは前代未聞だとして、橋田氏が話を続ける。

「長年ドラマの現場にいますが、そのような話は聞いたことがありませんね。俳優さんと揉めて撮影がストップしたことはありますよ。私の経験では大河ドラマ『春日局』の時でしょうか。主演の大原麗子さんが、家光の実母・お江与を演じた長山藍子さんの出番が多いって文句を言って休んでしまった。実母でありながら自分の息子を育てられない。その辛さをきちんと描くためには、長山さんの役を大きく描かざるを得ない場面があったんです」

 この時、橋田氏は自宅のある熱海から上京して、大原の説得にあたったとか。

「そもそも、長山さんがこの役になったのは、大原さんに“友達だから配役して”って頼まれたから。なのに、“あの人を外して”とワガママを言うのだから呆れました。中華料理屋でスタッフと一緒に説明して、“そのうち春日局の出番の方が多くなるから”って諭して台本は変えなかった。1日撮影が止まってしまいましたが、幸い放送に影響はありませんでした。そんなに揉めたのはこれくらいで、普段はプロデューサーが現場で上手く処理してくれるものなのです」

週刊新潮 2020年10月1日号掲載

特集「『半沢直樹』名脚本家が剛腕監督に切られた制作遅滞の舞台裏」より

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