「金」が史上空前のバブル 素人は投資すべき? 下落の危険性は?
金は従来、東西冷戦の時代などを通じて「有事の金」と称されてきた。歴史をさかのぼれば、今年40年ぶりに国内小売価格を更新するまで、1980年1月の1グラム6495円が最高値として君臨していたのである。
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「当時は中東でイラン革命が起き、またソ連軍がアフガンに侵攻した直後でした。世界的に政情が不安定になって、投資家の資産が『安全資産』である金に集中したのです」(経済ジャーナリスト)
もちろん利息がつくことはなく、主要国の通貨でも金本位制が廃止されて久しい。が、一方で金は、株や債券が紙くずと化すリスクなどとは無縁。それゆえ、永遠の資産価値を有しているというわけだ。
その金の価格が、まさしく飛ぶ鳥を落とす勢いを見せている。
「8月7日には、新たに大阪取引所へ移された金先物市場で、取引の中心となる『2021年6月物』の清算値(終値)で初めて7千円の大台に乗りました。また4月13日には、金地金(きんじがね)(インゴッド・金塊)大手の『田中貴金属工業』の税込み小売価格で6513円と、40年ぶりに国内での最高値を更新しています。その後も上昇が続き、同じ8月7日には3営業日連続で最高値を塗り替えて7769円をつけました。半年のリターン率では実に30%となり、現在も新高値をうかがう展開が続いています」(同)
一般に、株式の長期投資による利回りはせいぜい年4~6%と言われているから、このたびの「ゴールドバブル」の凄まじさが分かろうというもの。そもそも、こうした価格上昇は、
「18年8月にまで遡ります」
とは、貴金属アナリストの亀井幸一郎氏である。
「米中の貿易摩擦によって世界的な景気悪化の懸念が高まり、安全資産として注目されたことが大きい。さらに昨年9月にもFRB(米連邦準備制度理事会)が利下げを行ったことで、金は本格上昇の波に乗りました。加えて、新型コロナウイルス感染症蔓延を受けての世界的な金融緩和策。ドルをはじめ通貨の価値がどんどん薄まる中、金にマネーが集中したのです」
FRBなど各国の中央銀行が、ゼロ金利政策によって大量の資金を市場に“供給”しているのはご存知の通りだ。
「コロナ禍の収束のめどが立たず、景気も長期停滞の様相で、低金利は常態化しています。インフレ率を考慮した実質金利が各国ともマイナスとなる中、金利を生み出さない金が、かえってその弱点を消して魅力的に映っているのです」(同)
海水と「都市鉱山」
では、実際の購入法について論じる前に、資産としての金の位置づけに触れておこう。これまで人類が発掘してきた金は、ざっと19万7千トンにのぼるという。現在、年間の金産出量は約3300トン。対して、世界の埋蔵量は約5万4千トンとされており、単純に考えれば今後十数年で枯渇する計算になるのだが、一般社団法人「日本貴金属マーケット協会」の池水雄一・代表理事によれば、
「そういうわけではありません。埋蔵量とは、単純に地中に眠る金の量ではなく、あくまで現時点での相場や技術を勘案し、業者が採掘して利益が出る量のことです。技術的に掘れない、あるいは掘ってもコストに見合わない金の量は、これに含まれていないのです」
油田とは異なり、新たな鉱山が発見される可能性は低いものの、技術開発やコスト次第では今後「埋蔵量」が増えていく可能性もゼロではないという。さらに、
「実は、金が最も多いのは海なのです。といっても海底金鉱脈ではなく、海水にごく低い濃度で溶け込んでいる。かりに地球上のすべての海水から採取した場合、50億トンもの金が抽出できると言われています。もっとも、東京ドーム10~15杯分の海水を蒸発させて金が1グラム採れるかどうかですから、現状ではコストに見合いません」
また、国内にも現役で稼働する金山がある。広く知られる佐渡金山は1989年に閉山し、現在は鹿児島県の「菱刈鉱山」で唯一、商業ベースで大規模な操業が行われている。前出のジャーナリストが言う。
「産出量は年間で6トンほどですが、コストパフォーマンスが高いのが特徴です。何しろ、世界で採掘される通常の金鉱石からは1トンあたり金は3グラムほどしか採れないところ、菱刈では30~40グラムほど含まれている。すでに約248トンを産出しており、埋蔵量はあと163トンほど残っているとみられます」
さらに、意外な場所にも金は隠れていて、
「スマホなど携帯電話の半導体には金が用いられていて、廃材を回収すると1トンあたり150グラムほどの金が取り出せます。こうした『都市鉱山』ともいえる市場でのリサイクルは年間1500トンほどになり、供給量の4分の1以上をカバーしているのです」(同)
というから「廃品」などでは決してないのだ。
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