ワシントン・ポスト有名記者の最新「暴露本」から見える「トランプ」の本音

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リチャード・ニクソン大統領のウォーターゲートをスクープした記者

 元ワシントン・ポスト紙の記者が書いた『Rage(激怒)』が滅法面白い。トランプ大統領が2019年12月から17回にわたって記者のインタビューに応じ、合計9時間以上にわたって語った、これまで公に知られていなかった内情がまとめられているからだ。国際ジャーナリスト・山田敏弘氏のリポート。

 アメリカで共和党のドナルド・トランプ候補が大統領選に勝利したのは、今からちょうど4年ほど前の2016年11月3日のこと。

 そして今年11月3日、トランプの4年間の「信任投票」となる米大統領選が迫っている。

 これまでの4年間、アメリカではトランプ自身や政権について暴露する本が次々と出版されてきた。

 その数なんと1200タイトルにもなり、メジャーな作品だけでも20冊以上になる。

 しかもアメリカでは決して売れ筋とは言えない政治関係の内情をまとめた本にあって、トランプ本は数多くがベストセラー入りしている。

 最近の本だけを取り上げても、ジョン・ボルトン前大統領補佐官の暴露本は100万部、トランプの姪による批判本は1週間で135万部が売れている。

 そして最近、新たなトランプに関する本が出版されて、大きな話題になっている。

 ボブ・ウッドワード著の『Rage(激怒)』である。

 ウッドワードといえば、元ワシントン・ポスト紙の記者で、リチャード・ニクソン大統領のウォーターゲートをスクープし、ニクソン以降すべての米大統領の本を出版している名物ジャーナリストだ。

 今回の『Rage』はトランプについて書いた2冊目の本ということになる(ちなみに1冊目の『Fear』は200万部売れている)。

かなり面白いのは、北朝鮮についての記述だ

 480ページという大作にもかかわらず、非常に読みやすく、読み進める手が止まらないほどだった。

 それもそのはず、この本は、トランプ大統領が2019年12月から17回にわたってウッドワードのインタビューに応じ、合計9時間以上にわたって語った、これまで公に知られていなかった内情がまとめられているからだ。

 そこで数あるエピソードの中でも、かなり面白いのは、北朝鮮についての記述だ。

 本によれば、2017年、米国と北朝鮮はまさに開戦目前の危険な状態だったことが記されている。

 同年7月に北朝鮮がICBMの発射実験をしたことで、米国側は韓国の基地から警告の米陸軍戦術ミサイルを東海に向けて発射している。

 以降、何度も発射実験を行い、核実験も行った金正恩だが、米国も9月末にはB1戦略爆撃機など20機が、海上で北朝鮮と韓国を分ける北方限界線を超えて警告飛行を行ったという。

 当時、軍幹部も情報機関も戦争は避けられないだろうというところまで状況は切迫していた。

 これについてトランプはウッドワードにこう語っている。

「ヤツ(金正恩)は戦争をする気だった。金が直接私にそう言った。戦争の準備ができていたと。ヤツはやる気だったが、私は会談を選んだ」

 結局、翌年の6月にシンガポールで史上初の米朝首脳会談が行われた。

 そのおかげで、米朝は戦争にならずに済んだ、自分のおかげで多くが死なずに済んだ、とトランプは繰り返し強調したとウッドワードは書く。

 また北朝鮮については、こんな話も出てくる。

「金正恩は叔父(張成沢国防副委員長のことだと思われる)を殺害し、代議員たちが出ていく階段にその死体を置いた。首は切り落とされ、胸の上に置かれていた」

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