「ともだちとあそぶとおこられます」子どもの悲痛な声 コロナ過剰対策で不眠症も増加

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衝撃のアンケート自由記述

 保護者も悩んでいる。小1の女児を持つ母親は、

「うちの子の学校は半日だけ運動会をやりますが、応援団はフェースガードをつけるとかちょっと異常。給食の時間も話すのは禁止で、前を向いて黙々と無言で食べるのも、気持ち悪い」

 と不快感を示し、小2の男子の父親が、

「運動会のリレーを楽しみにしていたのに、中止になって落ち込んでいます」

 と嘆く。こうした状況下で、子どもたち一人ひとりがどうストレスを溜めているのか、「コロナ×こどもアンケート」によって明らかにしたのが、国立成育医療研究センターの半谷まゆみ研究員である。

 第1回は4月末~5月末に、主に緊急事態宣言下での子どもたちの気持ちを調べたという。6月中旬から7月末に行った第2回では、誤った知識や考えをもとに、他者への偏見や差別的感情をもってしまう「スティグマ」がどのくらいあるかも聞き出している。結果、感染した子が治っても「あまり一緒に遊びたくない」と回答した子どもが、22%に及んだという。

「ストレスを抱えている子は1回目が75%、2回目が72%で、子どもたちのストレス反応は依然多くみられたのが、最大の発見でした。親と子の関わりについては、家で怒鳴られたり、叩かれたりという割合が、2回目ではさらに高く出て、子どもたちが学校のほか、家庭でもストレスにさらされていることがわかりました」

 また、2回目の自由記述の項目では、

「胸が詰まるような声が寄せられました。小学校低学年からは“せんせいがこわいです。ともだちとあそぶとおこられます”“きゅうしょくを、もっとたのしくたべたいです”“外に出たときに、知らない人とすれちがうだけでこわくなる”“かぞくがコロナで死なないか心配。学校に行きたくない”。高学年から中高生に多かったのは、行事や部活動など大事にしていたものをすべて奪われ、遅れを取り戻すための勉強だけ押しつけられているのが嫌だ、というものです。“飲み屋さんとかで大人たちが騒いでいるのを見ると、私たちが普段学校とかでしている対策は何なんだろうなと思う”という中学女児の意見も、まさにそうですし、私には中学男児の“子どもも学校のコロナ対策に参加したい。決められたことしかしないのはおかしい”という意見が、胸に響きました。ただ従いなさい、というのでは、子どもは余計にストレスを溜めてしまう」

 そして、半谷研究員は懸念して続ける。

「このままの状況が続くと、子どもの心はどんどん不健康になっていきます。2回目の結果では、“死にたくなる”という声や、自分や他人を傷つけてしまうという、重度な症状が出ている子どもも見られました」

 大人が恐怖を煽ったまま、取り除かないために、子どもたちはまさに壊れようとしているようだ。臨床心理士でスクールカウンセラーも務める明星大学の藤井靖准教授が語る。

「コロナの影響による子どものうつは、この秋から冬にかけて増えると思います。ソーシャルディスタンスやマスク、行事中止の影響が大きく、特に人の印象は55%が、視覚的な情報によって決まるというのに、マスクをすると顔の半分以上が隠れる。先生は子どもの変化に気づきにくくなり、いじめや問題を抱える子どもがスルーされる危険性が高まります。マスクは子どもたちの心理的距離にも影響します。今年は子どもが集団に溶け込む4月が休校で、学校が再開してもマスクのせいで同級生や先生の顔が見えない状況が続いている。このためクラスに馴染めない子が、通常30人に2、3人程度だとすると、今年は10人程度いるクラスもある。また、不眠症も気になります。通常は子どもの不眠症は少ないのですが、今年は例年にくらべて4、5倍に増えています」

「感染者数」の呪縛を解け

 医師で医療経済ジャーナリストの森田洋之氏は、

「子どもの1年と大人の1年とでは、意味が全然違い、小学1年生の1年間は、大人の5年、10年に匹敵するというくらい、子どもの過ごす時間は中身が濃い」

 と言って、続ける。

「子どもたちは喧嘩したり仲直りしたりしながら、人との距離のとり方を学びます。犬やライオンの子も甘噛みしたりしながら、たがいの距離感をつかみ、彼らの社会での団体行動や集団生活を学びますが、人間も同じです。そういう点で、無理にソーシャルディスタンスをとるとか、行事ができないとか、学校の日常を取り戻せないのは、本当に失うものが大きい」

 精神科医の和田秀樹氏も、

「子どもは喜びを感じたり、ほめてもらったり、という快体験を通じて、心理的な発達が促されます。行事を通じ、これまでやってきたことを披露し、周囲の反応も含めての達成感を得ることで、健全な発達につながります。その意味で、いまのコロナ対策は危険かもしれません。それに一番の問題は、ほとんど感染者が出ていない県もふくめ、全国で同じ対策になっていることです。対策によってどう影響に違いが出るか、比較対象もないので、仮に悪い影響が出ても、気づくのが遅れてしまいます」

 と語り、こう加えた。

「新型コロナの怖さを判断するうえで、重症者数や死亡者数が大事なのに、感染者数ばかり気にするのも問題です」

 事実、日々メディアが伝える100人、200人という感染者数が、そのまま死亡者予備軍の数であるかのように錯覚しているため、子どもの重症者はゼロという事実を前にしても、過剰な対策を解こうとしないのだろう。森田氏が言う。

「感染者数をカウントすることが当たり前のような空気です。未知のウイルスで、重症者も死者も多数出かねないといわれた3、4月は、すべて数えてもよかったかもしれません。しかし、風邪でもインフルエンザでも、すべての感染者を数えたことなどないのです。感染者が増えても死者数が増えないという現象は、日本のみならず多くの国で見られます。過去の経験やデータに学び、感染者数に振り回されないように、ギアを変えていく必要があります」

 だが、それもこれも、冒頭で記したように「2類感染症以上」という扱いのままだから、なのだ。日本総合研究所のチーフエコノミスト、枩村(まつむら)秀樹氏が言う。

「2類以上という扱いは過剰対応で、マイナスが大きすぎる。2類以上の扱いをするウイルスでないのは明らかなのに、過剰な対策によって経済に甚大な損失が出ているほか、子どもの教育や健康など、幅広い方面に大きなマイナスが及んでいます。教育では社会と接してはいけないという風潮が、日本の10年、20年後の大きなマイナスにつながるでしょう。経済面ではGDP成長率が、2020年度はマイナス6%と予想され、そのうち半分は消費の喪失が原因なので、ほとんど人災です。当初はともかく、さほど怖れるべきウイルスでないとわかったのに自粛を続けるのは、自らの首を絞めているようなもの。結果的に失業者、自殺者の増加につながります」

 現に、8月の自殺者は全国で1849人と、前年同月にくらべ240人以上も増えた、と発表されたが、

「経済的理由による自殺者が増えるときは、一般に男性が中心ですが、今回は女性が多い。そこがわからないのですが、まだ3%を切っている失業率は4%を超え、これから40~60代の男性の自殺者が増え、年間で2千人増えると予想しています」

 とのこと。そして、こう締めるのだ。

「いつまでも2類以上の扱いをしていては、“恐怖のウイルス”という国民の認識を変えられません。指定感染症を解除するしか方法はないと思います」

 失業率と自殺者の増加に関しては、日本経済の心臓たる首都東京で無駄な自粛を延々と続けさせるあの人の罪が重すぎよう。新型コロナを「死の病」と誤解する層に自己アピールする小池百合子都知事。まさに万死に値するが、知事の暴走を防ぐためにも、子どもたちを、ひいては日本を救うためにも、菅新総理が新型コロナの扱いを一刻も早く、2類以上から5類相当に下げることを強く望む。

週刊新潮 2020年9月24日号掲載

特集「コロナ過剰対策であなたの子どもは壊れていく」より

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