尖閣「中国漁船衝突」から10年 映像を投稿した元海保「一色正春氏」に訊く

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侵略に屈しない日本

 一色氏の指摘を続ける。

「また国際世論を考えれば、中共が核ミサイルを発射するなどあり得ないと主張する人もいます。しかしながら、香港の問題で国際世論がどれだけ中共を批判しても、彼らは馬耳東風、核心的利益に関しては国際世論を聞く耳を持ちません」

 現在の国際社会は、力のある国家による支配が横行している。

「その事実を冷静に直視すれば、日本が核ミサイルを撃たれないためには、我々も核ミサイルを持つというのが現実的な考え方ではないでしょうか」

 今年6月、河野太郎防衛大臣(57)は、新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画の停止を表明した。

 一色氏は、この決定を「国を防衛するということを、どのように考えているのでしょうか」と憤る。

「計画を停止する理由として挙げられたのは、ブースターが住宅街に落下する危険性を除去できなかったというものでしたが、率直に言って、全く信じられません」

私は楽観的な人間

 一色氏は「核ミサイルが日本に発射されたという状況ほど、緊急を要する事態はないはずです」と言う。

「核弾頭が日本国内で爆発すれば、どれだけの人命が失われるかは言うまでもありません。一方、迎撃ミサイルの1段目ブースターが住宅街に落下しても、被害がない可能性のほうが高く、たとえ被害があっても核爆発の被害に比べるとごく僅かでしょう」

「ひょっとする本当は別の理由で中止したのかもしれませんが、いずれにしても、あまりにも些末な問題にこだわっているとしか思えません」(同)

 だが、一色氏は「国会の論戦に絶望することもありますが、基本的に私は楽観的な人間です」とも言う。

「国会の議論は聞いて呆れる内容が多く、安倍政権の方針に疑問を抱いたこともあります。国民の大半が平和ボケ、マスコミや政官財の各所に反日勢力が浸透していると思われる現状に鑑みれば絶望したくなりますが、それでも私は日本という祖国を信じます」

「我が国の2000年以上の歴史の中には、今以上の危機もあったでしょう。江戸末期、アジア諸国が次々と欧米に侵略されていった時や、世界最大の陸軍国との戦争、とりわけ先の大戦に破れた直後は国家存亡の危機と言っても過言ではありませんでした。それでも立ち上がった日本という国と日本人を私は信じています」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年9月21日掲載

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