コロナで「日本化」が進むフランス 衛生観念の違いに悩まされる現地の日本人たち

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それでも受け入れられない日本の習慣とは

 ただし、フランス人にとって、衛生面では良くても心理的に抵抗があるものもあります。日本の「食品の個包装」です。

「日本はどこに行ってもきれい」と多くの外国人旅行者が言うのは、街や建物だけではなく「食品がきれいに個包装されている」ということも含まれています。

 一方、フランスではマルシェ(市場)で野菜や肉、魚等を買う人がまだまだ多いです。マルシェでは商品は包装されずに陳列されているため、現在はコロナの感染を予防するためにお客は商品に触らないように言われ、お店の人が必要量を袋に入れてくれるところが増えています。

 ご承知のように、フランスは環境先進国です。

 日本での個包装は衛生的かもしれないけれど、プラスチックの消費量も膨大と捉えられているのです。フランスに住んで5年経つ私も含め、日本の商品を過剰包装ととらえている人は少なくありません。

 ただでさえ外出制限の期間にウーバーイーツなどのデリバリーやテイクアウトによる飲食店の使い捨て食器が増え、使い捨てマスクなども含めた環境への負荷が高まっていることを嘆くフランス人も多く、メディアでも話題として取り上げられています。ウイルスから守られるとはいえ、フランスの食品が日本のような個包装になることはないかもしれません。

 新型コロナによって多くのフランスの衛生習慣が「日本化」してきているのは嬉しいことですし、日本人としては衛生的には住みやすい国に変化している気がします。

 フランス人の国民性として、自分たちが良いと思ったらすぐに取り入れるという特徴があると言われます。フランスに住んでいると、法律もしょっちゅう変わるので戸惑うこともありますが、良いもの、効果があるとわかったことへの変わり身の早さは見習いたいと思います。

 ここまで書くと、日本が大絶賛されているような印象を受けるかもしれませんが、PCR検査の少なさにより感染者数が正確ではない、という指摘も報じられていることも付け加えておきます。

 また、感染を抑えられた理由としては衛生面だけではなく、早期に国境封鎖をしたことが奏功したとも言われています。

 フランス人の生活スタイルが少しでも衛生的に「日本化」したのはコロナによる偶然の成り行きであったかもしれません。

 それでも、新型コロナに関する報道では、“清潔な国の日本はすごい”という論調であることは間違いなく、フランス人の親日度がさらに上がったのは事実だと思います。

ヴェイサードゆうこ
翻訳家・ジャーナリスト。青山学院大学国際政治経済学部卒。ITベンチャーから転身し、女性向けweb媒体のライター、飲食専門誌の編集記者として執筆。2016年よりフランスに移住し、現在はYouTubeで現地情報を発信中(http://bit.ly/2uQlngQ)。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年9月21日掲載

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