韓国の大統領・首相からの書簡を「菅義偉首相」が“スルー”した理由
韓国の一つ一つの発言に対応をすることは生産的ではないと切り捨てた
韓国の裁判所が三菱重工業の資産差し押さえを決定した19年3月、菅長官は定例記者会見で、正当な日本企業の経済活動を保護するため適切な対応を取る考えを示している。
また、日本政府がいつどのような措置を取るかは、手の内を明かすことになるので差し控えたいと韓国政府に圧力を加えた。
菅長官は同年11月にも韓国を突き放す発言を行なっている。
同年11月4日、安倍前首相と文大統領は、タイのバンコクで開かれたASEANサミットに出席した折、10分ほど対談を行った。
日本政府が韓国を輸出管理制度のグループAからグループBに変更し、韓国がGSOMIA破棄を通告して以後、はじめての対面だった。
日本政府は、韓国の賢明な対応を求める考えに変わりはなく、日本の原則的な立場を安倍晋三首相が文在寅大統領に伝えたと発表した。
一方、韓国政府は、友好的な歓談で、両首脳が日韓関係の重要性を確認したと発表した。
記者から韓国政府の発表に関する見解を問われた菅長官は韓国の発表は韓国側に聞いていただきたいと突き放したのだった。
同月22日、韓国政府は韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を条件付きで延長すると通告し、青瓦台(大統領府)は日本の経済産業省から謝罪を受けたと発表した。
しかし、菅義偉官房長官は謝罪を否定し、韓国の一つ一つの発言に対応をすることは生産的ではないと切り捨てた。
菅義偉首相が一貫して韓国を無視するなか、代わって米国防総省のトップであるマーク・エスパー米国防長官が韓国に言及した。
エスパー長官は11月16日に行った講演で、中国と米国の潜在的な葛藤に関連し、米国と日本、オーストラリア、韓国、シンガポールを考えなければならないと発言した。
文在寅大統領は、米国同盟に属しながら習近平中国国家主席の訪韓を期待
いま米国と中国は、インド太平洋の覇権争いを繰り広げている。
米国は中国に対峙するため、海軍力を全面的に見直して、293隻ある海軍の艦艇を2045年までに355隻に拡大するなど、25年間で数百億ドルを投じる計画を立てている。
また、中国を包囲するため、米国、日本、オーストラリア、インドの4か国で構成する安全保障の枠組みであるクアッド(Quad)同盟の強化を目指している。アジア太平洋版NATO(北大西洋条約機構)を構築しようという考えだ。
米国はシンガポールと韓国にも同盟への参加を呼びかけるが、なかでも中国寄りの姿勢を見せる文政権に米国と中国のどちらを選ぶか、踏み絵を迫っているのである。
日本と韓国の関係は、米国を介した同盟が基本にある。
日本は民主制と自由経済を採用し、経済や軍事など米国と強固な同盟関係を築いている。
韓国は同じく民主制と自由経済を採用し、経済的に独立している米国同盟のなかで地理的に最も近い国である。
台湾は国連加盟の独立国ではなく、続くシンガポールとオーストラリアは、さほど近いとは言い難い。
文在寅大統領は、米国同盟に属しながら習近平中国国家主席の訪韓を期待している。
また、反日デーの三一節や光復節では日本に対話を求める演説を行なうが、19年8月15日の光復節で日本と対話したいと述べながら、舌の根が乾かない同月24日にGSOMIAの破棄を通告して韓国内の反日勢力を煽るなど、一貫性がない言動を繰り返している。
安倍前政権は文大統領の10億円を返還するという国内発言に、受け取らないと反応したが、韓国にはその場その場の思いつきを声高に主張する文化がある。
文政権に対して反応することは、まさに生産的ではない。
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