地上波はオワコンになった「クレヨンしんちゃん」 好調「名探偵コナン」との違い
名探偵コナンは好調
劇場では極めて優良コンテンツだが、地上波では完全なお荷物──テレ朝編成の苦労が忍ばれるというものだ。
だがテレ朝が、クレヨンしんちゃんの低視聴率を「少子化のせい」と弁解するのだとしたら、やはりカッコ悪いのかもしれない。
視聴率戦争のライバルである日本テレビは、地上波のアニメ番組でも、しっかり“及第点”を取っているからだ。
日テレ系列で放送されている「金曜ロードSHOW!」(金曜・21:00)は9月18日、「名探偵コナン 江戸川コナン失踪事件〜史上最悪の2日間〜」を放送した。
「この作品は劇場版ではなく、原作連載20周年を記念して制作されたテレビアニメ2時間スペシャル版です。14年12月に『金曜ロードSHOW!』で放送されました。視聴率は12・1%という記録が残っていますが、9月18日に放送された分も10・4%と好調な数字でした」(同)
先ほどの表を見ていただきたいが、8月17日から23日の週は「名探偵コナン」がアニメの視聴率1位に輝いた。
地上波と劇場版の関係
「名探偵コナン」のライバルは「サザエさん」(フジテレビ系列・日・18:30)で、アニメ部門の世帯視聴率は「サザエさん」が1位、「名探偵コナン」が2位で終わる週は決して少なくない。
それでも、「名探偵コナン」の視聴率が3位以下に落ちこむことは珍しい。日テレにとっては、今も視聴率10%に近い数字を安定して取る優良番組ということになる。
「『名探偵コナン』も1996年に放送が始まった時は、月曜午後7時半というゴールデンタイムでした。やはり少子化の影響などで“引っ越し”を余儀なくされましたが、現在でも土曜の午後6時という子供のライフスタイルに配慮した時間帯になっています。つまり塾や習い事が終わって子供たちが自宅に帰ってくる時間なのです」(同)
現在、「名探偵コナン」の劇場版最新作「名探偵コナン 緋色の弾丸」(永岡智佳監督:東宝)は新型コロナの影響で公開が1年延期となり、2021年4月の公開予定となっている。
前作は19年4月に公開された「名探偵コナン 紺青の拳」(同)で、興行収入は何と93億7000万円に達した。
この年は「天気の子」[新海誠監督:東宝]が140億2000万円の興収で邦画1位を獲得したが、「名探偵コナン」も2位に付けた。
クレしんの未来は?
前出の関係者が危惧を指摘する。
「テレ朝さんは、ひょっとすると映画の興行収入と地上波の視聴率は連動しないと判断しているのかもしれません。しかし、そうだとすると、相当なリスクがあると思います」
やはり地上波でアニメを見た子供たちが、劇場に行くというのが基本だという。
「『名探偵コナン』は、その“王道”を堅守しています。『名探偵コナン』と『クレヨンしんちゃん』の劇場版では興行収入に差がついていますが、『この差は地上波の放送時間帯と関係がない』という証拠はどこにもないのです」(同)
「クレヨンしんちゃん」は1993年7月、視聴率28・2%の歴代最高記録を達成した。この7月に4歳から12歳の個人視聴率は何と67・6%に達したという。
一方、劇場版は安定して10〜20億円台の興行収入だったが、1999年と2012年に10億円を割るという“冬の時代”を経験している。
だが、その後の劇場版は必ずV字回復を成し遂げ、現在に至っている。テレビの視聴率は減少するばかりだが、劇場版の興行収入のように回復を示す日は来るのだろうか?
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