オスカー新エース「小芝風花」主演「妖怪シェアハウス」最終“怪”見どころ

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令和の時代に稀少なワイルド系俳優も参戦

 そして、酒飲みでやや乱暴な物言いのイケメンリーマン・酒井涼。本体は酒呑童子、要は鬼だ。

 女の好みはこうるさいが、女性にある種のトラウマも。一方的に思いを寄せられて、その恨みの炎で鬼になった経緯があるからだ。

 演じるのは令和の時代に稀少なワイルド系俳優・毎熊克哉。朝ドラ「まんぷく」(NHK)の塩メンズ(塩作ってた男たち)のひとりで、今年1月に人気を博した「恋はつづくよどこまでも」(TBS)で、女性たちを虜に。

「少年寅次郎」(NHK)ではろくでなしの父親役を好演(個人的には鬼の姿よりも人間の姿を長く観ていたい)。

 回を追うごとに、小芝の頭に生えた角が伸びていく。つまり、妖怪たちと過ごすうちに「妖怪化」していく。

 それに気づいたのが、シェアハウスがある神社の神主・水岡譲だ。陰陽師の末裔だが、妖怪たちにこき使われてしまうほど未熟。演じるのは味方良介。

 今年の新春ドラマ「教場」(フジテレビ)で、本心では警察を憎む優秀な警察学校生を演じた味方が、ここではヘタレ扱いの陰陽師だ。

 もうひとり、小芝を支える男性が。小芝が働く弱小編集プロダクションの社長・原島響人。小芝を突き放して決して甘やかさないドS社長だが、実は小芝をSNS上で応援してくれている。小芝もそれに気づき、胸キュンへ…。

 原島を演じるのは大東駿介。大東の本来の持ち味としては、成敗される側、つまりクズ男のほうが存分に発揮できるのだが、ここでは二枚目の善人役だ。個人的には、金曜日放送の「浦安鉄筋家族」(テレ東)で、とてつもなく阿呆の教師を演じている大東のほうが好き。

「ケイゾク」「SPEC」「民王」の脚本家による変化球は?

 人間のあさましさを妖怪たちが成敗。そんな単純な勧善懲悪だけではない、想定外の結末があるに違いないと思っていたら、先週の第7話で思いもよらぬ方向に。

「小芝の妖怪化を止めるには人間の男と結婚するしかない!」てな話になっちゃって。

 小芝を巡って、味方と大東がまさかのプロポーズ。恋の三角関係やいかに、というので、思わず白目剥いちまったよ(白目剥くの2回目)。

 このドラマは「女性が、主語を取り戻して、自立していく」ことが命題と思っていたのに、オチが結婚かよ! 

 それで小芝は救われるのか? 逆に地獄では? 人間やめて妖怪になったほうが救われるのでは? と脳内では大ブーイングである。

 ただし、脚本はあの西荻弓絵である。

「ケイゾク」「SPEC」「民王」でも想定外の変化球、あるいは痛快な暴投をしれっとぶちかます脚本家だ。

 この妖怪シェアハウスでも何かが起こるに違いない。

 解決策が結婚と見せかけ、そこからの奇想天外な策があるに違いない。ほっこり胸温まる話でなくてもいい。

 後味の悪い結末も大好物。コメディと思って気を抜いて安心して観ている人を思いっきり裏切ってほしい。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年9月19日掲載

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