菅内閣の目玉「免許証デジタル化」を既に実施…「韓国」で叫ばれる「不要論」
前提となる「住民カード」登録のため10本の指の指紋捺印を2回とられる
小此木八郎国家公安委員長は9月17日の就任記者会見で、「菅義偉首相から強い指示があった」として、運転免許証のデジタル化を推進すると表明した。実は隣国・韓国では免許証のデジタル化は6月24日から実施されている。その実態に関するリポート。
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韓国では免許証云々の前に住民カードの登録が徹底されている。
日本のマイナンバーカードに相当する韓国の住民カード。必要な事項を記入する以外に、10本の指の指紋捺印を2回とられる。
最終的にそこに立ち返ることができるので、住民カードによる本人確認を盤石なものにしている。全ての金融機関、公共機関はこの住民カード情報を共有する。
例えば、新型コロナ発症時に「どこで何を購入したか」などのクレジット・デビッドカード使用履歴を当局のホームページで確認できたのは、そういうわけだ。
あるいは、パスポートの不携帯で空港に向かっても即時発行が可能なのだが、それも指紋押捺を含めた住民カード・システムのおかげと言える。
韓国では銀行決済、振り込み等は365日24時間ネットでの即時決済が可能だ。それを行うためには認証・信用アプリ「pass」への登録が必要になる。
そしてその認証・信用アプリを有効にするには、住民カードが必須というわけだ。
韓国のデジタル免許証は、その認証・信用アプリに組み込まれる形になっている。
運転免許証は本人名義のスマホに限り登録でき、使用時にはスマホ画面に本人の顔写真や認証用のQRコード、バーコードなどが表示される。
顔写真は、ブロックチェーン技術を活用して警察庁の運転免許システムと連動させることで、実際の運転免許証の写真がそのまま画面に表示されるようになっている。
生年月日や住所などの情報は暗号化されている。
では、デジタル化された免許証について韓国人や韓国に関係する人たちはどう思っているのか?
もともと不要なものをデジタル化して利便性はどうかというのもナンセンス
・ソウル在住 韓国人Aさん
「アプリにまだ免許証の登録をしていません」
「韓国では、住民カード番号の頭7桁の数字(番号全体は13桁)を覚えておけば事足りる。万が一警察に捕まって免許証不携帯でも、その数字を伝えれば身元確認が可能です」
「免許証と住民カードの番号は共通で、身元確認はもっぱら住民カード。要するに、かねてリアルな免許証は、実質的に不要だったわけです。もともと不要なものをデジタル化して利便性はどうかというのもナンセンスですよね(笑)」
・ソウル駐在員 日本人Bさん
「やっと日本もか、と感じました」
「韓国ではすべてがカード、デジタル社会なので現金を持ち歩くと言うことはほぼ無くたまに帰国すると日本での現金持ち歩きが不便に感じます」
「免許証は韓国のものに切り替えています。ただ、韓国は運転が荒いので自身で車を運転することはありません。ですから、認証アプリに免許証の登録もしていません。日本では車を運転していますが、免許証を携帯すれば事足りると感じています」
・ソウルに25年在住 日本人Cさん
「正直、デジタルのインフラに関しては韓国が日本に比べ1歩も2歩も、いやそれ以上に進歩していると思います」
「普段の生活は便利です。公共交通機関では『交通カード』をアプリでもカードでも持っていればそれ一つでOKですし、タクシー代の決済にも利用できます」
「私が持っている外国人登録書、住民カード、免許証は番号が全て同じで、免許不携帯の場合でも身元確認ができるということで罰金20万ウォン(1ウォン=0.09円)は大目に見てもらえることが多いです」
「そうなるとやはり免許証のデジタル化って何なのか? 意味があるのか?と思ってしまいますね、日本も韓国も」
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