「文政権」のアキレス腱…不都合な「機密文書」公開を拒む左翼政権の皮肉
1989年度当時の外交機密文書が大量に公開されたが…
1989年8月15日板門店から韓国に帰還したイム・スギョンは国家保安法違反の容疑で逮捕され懲役5年の判決を受けたが、1992年12月に仮釈放された。
また、この事件の首謀者ともいえるイム・ジョンソクは火炎瓶や鉄パイプを使用してアメリカ大使官邸や官庁などの襲撃を繰り返していたが、ついに1989年12月に逮捕され、1993年に仮釈放されている。
それから30年が経過した去る3月31日、韓国外交部の規定に基づき、1989年度当時の外交機密文書が大量に公開された。
しかし、その中にはあれだけ注目を集めた「イム・スギョン訪北事件」関連文書は含まれていなかった。
翌4月1日、「韓半島人権と統一のための弁護士の集い(韓弁)」という団体が外交部に情報公開を要求した。
外交部が、個人情報や韓米交渉についての記載があることを理由に公開を拒否すると今度は、カン・ギョンファ外交部長官を被告人として情報公開を求める訴訟を起こしたのだ。
カン・ギョンファ外交部長官は裁判を遅らせる一方で、7月には『外交文書公開に関する規則』の改訂令を公布。
機密文書の公開可否を審査する審査員を増やして審査を強化するとしている。
裁判を遅らせたり、関連する法律を変えてみたり、イム・スギョン訪北事件関連書類をめぐるカン・ギョンファ外交部長官の動きが妙なのは、文政権がこの事件についての文書を公開したくないからではないかと言われている。
今や文大統領の側近中の側近と国会議員に
事実、事件の首謀者であったイム・ジョンソクは現在、文大統領の側近中の側近として外交安保特別補佐官を務めているし、イム・スギョン自身も2012年の国政選挙において民主統合党(現在の共に民主党)の比例代表で当選。
4年間議員を務めており、今後も引き続き政界に関わっていく可能性がある。
そして現在の韓国政界ではこの二人以外にも数多くの全代協出身者が活躍中である。
彼らの事件当時の犯罪履歴や過激な反米発言、政治的発言、そしてイム・スギョンの北朝鮮入国を支援した人々に再度光を当てることは、今後の選挙対策でも国際関係でも決してプラスにならないことが容易に想像できる。
隠し通せるものならそうしたいと考えるケースもあるだろう。
まさに文政権のアキレス腱になるかもしれない当文書の公開を求めた裁判は来る9月18日にその第一回弁論が行われる。
裁判のゆくえから目が離せない。
そして驚くべきは、反米、親北朝鮮発言を繰り返しながらも、肝心の北朝鮮からは扱いづらいと思われている現在の文政権の政治スタイルが、30年前の時点ですでに確立されていることだ。
韓国人の反米感情。これまた根が深く、親米への転換は難しいものと言えるだろう。
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