6千万人目に届く活動を作り上げる――湯浅 誠(全国こども食堂支援センター むすびえ理事長)【佐藤優の頂上対決】

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コロナを乗り越えて

佐藤 今回のコロナ禍は、こども食堂にどんな影響を与えていますか。

湯浅 やはり人が集まる場所ですから、いま10~15%ぐらいしか開いていません。もっとも閉めていても、お弁当を配ったり、食材を配布する活動に切り替えて活動している場所が50%近くあります。活動が縮小した点はマイナスですが、プラスの要素もあります。一つは社会的な注目が集まったこと、そしてもう一つは閉鎖されたことで、ここが大事な場所なんだと多くの人が感じたことです。

佐藤 それは学校もそうですね。

湯浅 一斉休校になって初めてそのウエイトの大きさがわかった。学校給食もそうですし、居場所としてもそうで、それがないと働けない人がたくさんいました。

佐藤 見えないものが可視化されたところがある。

湯浅 だから今回のコロナで、こども食堂への寄付もたくさん集まっていますし、支援したいという方もどんどん出てきています。それで私は非常に忙しくなってしまったのですが、とてもありがたいことです。

佐藤 湯浅さん自身は具体的にどんな仕事をされているんですか。

湯浅 こども食堂を支援したい、となったら、全国こども食堂支援センターを名乗っている私たちのところに連絡がきます。この間はイオンさんから支援のお話がありましたが、そうした企業から何千万円かのお金をお預かりし、それを助成金の形で全国のこども食堂にお渡しする。社会とこども食堂の間に立って、仲介し、それが生きたお金として使われるようにするのがいまの仕事です。

佐藤 この活動は将来、どのように発展させたいですか。

湯浅 まずは2025年までに全国2万の小学校区すべてにこども食堂を作るのが目標です。その先にある“ありきたりな未来”を言えば、国がこども食堂を政策として外部センター化し、毎年、予算をもらいながら運営し、全国研修もやって、というものでしょう。でもそれだと30年も経てば、ものすごく官僚的な組織になりかねない。だからそこは目指しません。

佐藤 ではどんな形に?

湯浅 どこの下請けにもならず独立性を持ち、国ともカウンターパートとして活動しながら、企業も含め世の中に賛同者を増やして社会的影響力を持ち続ける。これが望ましい形だと思います。

佐藤 国家と個人の間にある中間団体的な方向ですね。

湯浅 そうです。国と対等に話ができる団体です。喧嘩するつもりはないですが、意に沿わないことがあれば「それはやめておきます」と言えるような力はつけていきたいと思っていますね。

湯浅 誠(ゆあさまこと)全国こども食堂支援センター むすびえ理事長
1969年東京生まれ。東京大学法学部卒。同大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。90年代よりホームレス支援に従事し、2008年、年越し派遣村の村長に。09~12年内閣府参与。その後、子どもの貧困問題に関わり、18年にむすびえを設立した。14~19年まで法政大学教授、現在は東京大学特任教授も務める。

週刊新潮 2020年9月10日号掲載

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