「東京マラソン」延期を都庁が“口止め”した理由 来年の五輪開催をゴリ押しか

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〈東京マラソン、来年3月開催困難なら秋検討〉

 9月1日に共同通信が配信したこのスクープ、実は東京マラソン財団がひた隠しにしていた案件だった。

 その5日前の8月27日、時事通信が、

〈東京マラソン、来春も一般中止か エリートのみ実施で検討〉

 と報じた。周知の通り、今年3月に行われた東京マラソンは、一般ランナーの出走を中止し、エリート選手179人のみで行われた。走れなくなった一般ランナーたちには2021年または22年大会の出場権が与えられている。

 だが、時事のこの一報は誤報だった。

「来年の大会では必ず一般ランナーも走らせます。彼らの不満を早く解消させたいですから」

 と囁くのは東京マラソン財団の幹部である。

「なので、時事の記事について問い合わせてきた社には、“エリートだけでの開催は考えていない”と説明しました」

 その結果、翌28日は〈一般ランナー参加で検討〉など時事を否定する記事が各紙に掲載された。ただ、記事はいずれも開催時期を「3月」としていた。

「実は、8月中旬には、来年秋に開催することで内々に決まっていました。今のコロナの状況を考えれば、3月に4万人近くのランナーを集めるレースなんて到底無理ですから。でもメディアには知らせなかった」

 日程が変わるならいち早く公表すべきだが、なぜアナウンスしなかったのか。

「いま“東京マラソン延期”を発表すると、“やっぱり東京は危険”との印象が世界に伝わり、“五輪中止”の流れが加速してしまう――と、都庁サイドから口止めされていたんです」

 8月31日、秋開催の情報を掴んだ本誌(「週刊新潮」)は同財団広報部に「来年の東京マラソンが同年秋に行われる可能性はありますか?」と問い合わせた。回答が来たのは翌日の1日午後2時。

「現在、21年大会の実施内容について検討しているところです。検討内容については申し上げられません」

 それは、共同通信が冒頭のスクープを打った数時間後のことだった。

 ひた隠しにされた“不都合な真実”が、本誌の取材が契機となって白日の下にさらされたのなら、結構な話ではあるのだが……。

 ランナー諸氏よ、とにもかくにも有給休暇は来年度にとっておくべし。

週刊新潮 2020年9月10日号掲載

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