「リニア中央新幹線」…JR東海と静岡県との対立から鉄道のトンネルとは何かを考える

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 リニア中央新幹線の南アルプストンネルの掘削にまつわるJR東海と静岡県との対立はなぜ生じているのか。そしてそこから鉄道のトンネルとは何かについて、鉄道ジャーナリストの梅原淳氏が綴る。

丹那トンネル(長さ7・80km)は湧き水の多いトンネルとして知られる

 JR東海がただいま建設中のリニア中央新幹線に大井川水資源問題が生じているのをご存じであろうか。

 この問題の舞台は南アルプスの山々を一気に貫くその名も南アルプストンネルである。リニア中央新幹線の始発駅となる品川駅側からこのトンネルに入ると、山梨、静岡、長野の各県内を順に通り、トンネルを抜けると終点の名古屋駅側だ。長さは25・02kmに達する。

 大井川水資源問題とは、南アルプストンネルの建設で生じる大量の湧き水により、このトンネルの上を流れる大井川の水が減ると予想されていることから生じた。

 リニア中央新幹線が通過し、大井川の流域でもある静岡県は、JR東海に対してトンネル内の湧き水すべてを大井川に戻すように求め、JR東海も応じるという。

 だが、その手法であるとか、そもそもの湧き水の量について両者に意見の相違が見られ、静岡県はリニア中央新幹線の建設を認めていない。

 山でも海底でも地下でも、トンネルを掘るとほぼ確実に湧き水が発生する。トンネルが地中を貫くことにより、周囲にしみ込んだ水がトンネルへと流れ込むからだ。

 湧き水と言うと少ない印象をもたれるがそうでもない。

 静岡県の熱海市と函南町との間を通るJR東海東海道線の丹那トンネル(長さ7・80km)は湧き水の多いトンネルとして知られる。

 熱海市側、函南町側それぞれの入口に流れ出る1日の湧き水の量について函南町は約10万t、JR東海は約2万tとそれぞれ言っていて、なぜか数字が合わない。

 ともあれ、このせいで丹那トンネルの上に広がる盆地では水がすっかり枯れてしまい、農業を断念せざるを得なくなった。だから、大井川水源問題は単に地元のエゴと片付けてはならない。

青函トンネルを上回る長さのトンネルが存在する地下鉄とは

 南アルプストンネルの話を取り上げたので、鉄道ではおなじみのトンネルについて紹介しよう。

 2018(平成30)年3月31日現在で鉄道のトンネルは全国に4924カ所あり、延長は3967.80kmに達する。平均するとトンネル1カ所当たりの長さは806mだ。

 両端の入口どうしの距離が最も長いトンネルは、よく知られているように本州と北海道との間の海底を行く青函トンネルである。長さは53・85kmで、JR北海道の北海道新幹線、そして同じく海峡線の列車が通り抜けていく。

 地下鉄では青函トンネルを上回る長さのトンネルが存在する。大阪市高速電気軌道、通称Osaka Metro谷町線の名称のないトンネルで長さは55.97kmだ。

 大日(だいにち)駅と八尾南駅との間を結ぶ谷町線の長さは28・1kmにすぎないのに、トンネルの長さは2倍近くもある。

 大日駅方面の線路のトンネルと八尾南駅方面の線路のトンネルとは基本的には別々のトンネルとして掘られているなか、駅などでは一緒になって1本のトンネルにまとめられた場所もある。Osaka Metroによると、両端の入口間の距離ではなく、延べ長さとして表した結果、青函トンネルを上回る長さとなったそうだ。

 鉄道のトンネルは山や海底などを通り抜ける山岳・海底トンネルと、地下に掘られた地下トンネルとに分けられる。どちらもトンネルではあるが、トンネルの顔とも言える断面の形は異なっていて、すぐに判別を付けられるほどだ。

 山岳・海底トンネルは上側がアーチを描き、側面は垂直またはやや傾いた直線となっていて下側が水平という具合に、馬のひづめのような馬蹄形(ばていけい)をもつものが大多数である。

 一部に円形の断面のトンネルもあるが、入口付近がこのような形のトンネルは少なく、内部の一部分だけという例が多い。

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