コロナに朗報!? 人体に安全な“照らして除菌”できる紫外線装置
コロナ禍で関心が高まる生活の中の「消毒」や「除菌」。このほど東芝ライテック株式会社(本社:神奈川県横須賀市、以下東芝ライテック)とウシオ電機株式会社(本社:東京都千代田区、以下ウシオ)が業務提携を発表したのは、人体に安全な“照らして除菌”できる紫外線装置の開発だ。照明器具に搭載する形での実用化を目指しているという。東芝ライテックに構想を聞いた。
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現在使われている紫外線(UV)除菌には、例えば食堂の調理場に採用されている「滅菌器」がある。食器やまな板を除菌する効果があるが、使われている波長254ナノメートルの紫外線には人の皮膚や目への傷害リスクが高く、密閉された形で照射されるのが基本となっている。
これに対し、8月26日に発表された件の装置に用いられるのは、人体に優しい波長222ナノメートルの紫外線。ウシオ電機が開発した殺菌用光源「Care222」が実現させた技術で、こちらは有人環境での使用も可能となる。当初ウシオ電機は2022年頃からの発売を目指していたが、コロナ禍を受けて予定を前倒しし、照明器具に強みのある東芝ライテックとの協業を検討したという。東芝ライテックによれば「春にお声がけ頂いて、とんとん拍子に話が進みました」。まずは来年1月に企業向けの販売を目指している。
現在、東芝ライテックが想定しているのは「電車」「船舶」「コミュニティバス」「シェアリングカー」「高齢者施設」「教育施設」「オフィス」「コンサートホール」の8つの領域での使用だ。
「モビリティ(交通)分野やファシリティ(企業などの施設)分野という東芝ライテックの強みを生かすことができ、かつ公共性が高い領域という観点からこの8箇所を選出しました。従来は人の手で逐一アルコール消毒していたところを、「Care222」の技術を導入すれば、大幅に手間や人件費を節約することができます」(東芝ライテック)
ドローンに搭載し…
実際、今回のコロナ禍でも、船や学校がクラスターの場となるケースがあった。もし「Care222」が搭載されていれば防げたかもしれない……と想像は膨らむが、実際のところの効果はどうなのか。
「一般的な住居の天井である2・5メートルの場合、テーブル面で3~4分、床面だと7分で99%のウイルスが抑制できる。消毒液による除菌・ウイルス抑制と違い、空間にも作用するため、空気中の飛沫に対しても効果が期待できます」
ただし課題もあって、自動車や公共交通機関に搭載するにあたっては、さらなる軽量化、小型化、そして耐震化の必要があるそうだ。これらがクリアされれば「まだまだ夢の話」(東芝ライテック)としても、将来的にはドローンに「Care222」とウイルスセンサーを搭載し、ウイルスが多く存在するところに自ら飛んでいって重点的に照射といった、効率的な使用もできそうだ。
将来的には家庭用に向けても開発・販売を検討しているという。
「私達は、この商品を『UVライティング』というコンセプトで展開していく予定です。ウシオ電機さんとともに、今ある空間に新たな技術『UVライティング』を導入し、クリーンな環境を作り続けていきたいと考えています」
消毒の手間も費用も節約でき、広範囲の空間に効果を発揮できるこの技術が普及すれば、コロナ禍でも安心して経済活動ができるようになるだろう。現在展開を予定している8箇所のほかに、映画館やカラオケボックスへ導入することも構想中とのこと。新型コロナ終息の見通しが立たない中に射した希望の”光”といえるだろう。
(取材協力/東芝ライテックの取締役 産業デバイス事業部 事業部長 西原隆史氏、事業企画部長 大谷明生氏、照明電材事業部 事業企画部長 井原順子氏、経営企画部 白石行秀氏)