福岡通り魔殺人「15歳少年」出所2日後の凶行 責任の所在は

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 少年院を出た2日後の凶行である。なぜ無差別殺人者を野に放ってしまったか。兆候はなかったのか。彼に自由を与えた者の責任が問われるのである。

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 赤く染まった包丁を手に、血走った目で歩き回る男。それを見て逃げ惑う客。8月最後の金曜夜。福岡市のショッピングモールに満ちた阿鼻叫喚……。

 事件が起きたのは、8月28日19時半。福岡ドームに隣接した「MARK IS 福岡ももち」で、包丁を持って暴れる15歳の少年が取り押さえられた。程なく、1階の女子トイレで、同市在住の吉松弥里さん(21)が血を流して倒れているのが発見される。少年は即座に逮捕され、吉松さんは死亡が確認された。二人の間に面識はない、いわゆる「通り魔」的犯行である。

「酷い事件でした」

 と振り返るのは、さる全国紙の社会部記者。

「凶器は刃渡り18・5センチの包丁で、首や胸をめった刺しにしています。また、その後も、近くにいた6歳の少女に馬乗りになって刺す寸前までいった。ここで取り押さえられましたが、第二、第三の犠牲者が出る可能性もありました」

支離滅裂な供述

 人を殺めることに一片の迷いもないかに見えるが、この15歳の「少年A」とは、何者なのか。

「彼は中学3年生で、直前まで、九州地方にある少年院に入所していました」

 と述べるのは、別の全国紙の社会部デスク。

「この少年院は、知的、情緒障害のある少年を見る施設。そこから出所が認められ、8月26日に福岡県内の更生保護施設に入ります。この施設も、少年の保護実績で名が知られ、また、知的障害などを持つ出所者への知見も深かった」

 犯罪や非行により刑務所や少年院に入った者が、仮釈放や退院で社会に出た際、頼る親族がいなかったり、帰る場所がなかったりするケースはままある。更生保護施設とは、そうした者たちが自立するまでの間、宿泊や食事を提供する場所のことで、全国に103ある。いずれも民間による運営だ。

「この少年も出所後、家族の元で暮らせない事情があったのでしょう。そして施設に入ってわずか1日で無断でいなくなり、翌日の夜、犯行に及びました。取り調べには支離滅裂な供述をしています」

 彼の来歴をふり返ると、処遇に細心の注意を払うべき存在であることは明白。まずは“脱走”を許した施設の責任が問われようが、

「更生保護施設は言わば、船が港で一時避難する安全地帯。非常にゆるいのです」

 と言うのは、受刑者の処遇についての著書を持つ、ノンフィクション作家の斎藤充功氏。

「そもそも監視する施設ではなく、私が取材した施設では警備員もいなかった。監視カメラくらいはありましたが、行き先、目的などを書いた届けさえ出せば、外出も自由です」

 もともと更生保護施設が出来たのは、社会への円滑な復帰を図るため。その精神からして、管理が緩くなるのは必然なのだという。

 むしろ、

「問われるべきは、少年院の方ではないか」

 と斎藤氏。

「出所後すぐの犯行となれば、そもそも出所に値するという判断が妥当だったのか。更生した、という判断が甘かったのではないか、と」

 当の少年院に聞くと、

「個人に関わる情報はお答えできません」

 と言うのみ。

 なぜ彼は出られたのか。その判断主体は誰だったのか。今後の全容解明は必須である。

週刊新潮 2020年9月10日号掲載

ワイド特集「手に負えない輩」より

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