文在寅が日米韓防衛会談を拒否、中国に忖度し堂々と米韓同盟を壊し始めた…
Quadに韓国は入れない
――親米派にクーデターを起こさせる手は?
鈴置:その可能性は極めて薄いと思います。そこまでして韓国を自分の側に置くインセンティブは米国にない。対中戦略を考えた際、軍事的に韓国はさほど重要な位置にないからです(日本への毒針? 原潜保有を宣言した文在寅政権 将来は『核武装中立』で米韓同盟破棄」参照)
それに、韓国の親米派に中国に立ち向かう覚悟があるか、はなはだ怪しいのです。仮に、クーデターが成功しても「親米に見えて実は従中」政権が登場する可能性が高い。
米国の安保専門家から韓国に関しヒアリングを受けるたびに、これを聞かれます。保守も含めた韓国人の「離米従中」は米国人も専門家なら、よく分かってきたと思います。
総じて言えば今のところ、米国は韓国を様子見しています。8月31日、ビーガン(Stephen Biegun)国務副長官が、中国牽制用の集まり「Quad(日米豪印協議)」をNATOのような多国間の常設機構に格上げする方針を打ち出しました。
国務省の「Deputy Secretary Biegun Remarks at the U.S.-India Strategic Partnership Forum」(8月31日、英語)で読めます。
ビーガン副長官は「韓国、ベトナム、ニュージーランドの3か国を加えた『Quadプラス』に拡大するつもりか」との質問に「やや慎重である。すべての国が同じ速度で進むべきだからだ」と答えています。
・ I think we’re going to have to be a little bit careful here in doing that, although I think from an American perspective that would be easy. We’ve got to make sure everybody’s moving at the same speed.
要は「中国の顔色を見る韓国などを包囲網に加えれば、機構が弱体化する」との考えを示したのです。韓国にとっては米中のどちらを選ぶかの決断に、猶予期間が与えられたわけです。
韓国の死命決める米中半導体戦争
――米国の「様子見」が終わる時は来るのでしょうか。
鈴置:米国の対中攻撃を韓国が邪魔すれば、韓国への「お仕置き」を発動すると思います。焦点は米国によるファーウェイ(華為技術)への締め付けです。サムスン電子がファーウェイに中核部品を供給すれば、米政府はサムスン電子に制裁措置を科すでしょう。
制裁の程度にもよりますが、同社が韓国経済に占める大きさを考えると、国全体に相当な痛みをもたらすのは間違いありません。さらにFRB(連邦準備理事会)が韓国に供給している為替スワップも停止すると思われます。これは韓国の金融市場を大きく揺らします。
注目すべきは、米政府がファーウェイ締め付けの度を増していることです。非米国企業には、ファーウェイが設計に関与し、米国の技術の絡む半導体の供給を禁じてきました。8月17日にはそれをファーウェイが設計しない半導体にも広げました。
つまり、ありとあらゆる半導体をファーウェイには売るな、ということです。「米国の技術が絡む」との但し書きが付いていますが、「米国の技術が絡まない半導体」は皆無と見られますので、事実上「半導体は一切、売るな」ということです。
日経の「米、ファーウェイ徹底包囲網 テック経済圏から遮断」(8月18日)は「米政府関係者は、サムスン電子や台湾の聯発科技(メディアテック)などが設計する半導体を想定商品として示唆した」と報じました。サムスン電子は米国の照準鏡のど真ん中に入っているのです。
メモリーで世界最大手のサムスン電子が半導体供給を中断すれば、ファーウェイは死活的な打撃を受けます。それを防ぐため中国政府が韓国政府に対し、米国の締め付けをサムスン電子に無視させるよう圧力をかける可能性が高い。
サムスン電子が無視すればもちろん、米国は韓国に鉄槌を下します。半導体を舞台にした米中戦争は韓国の死命を決するのです。
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