文在寅が日米韓防衛会談を拒否、中国に忖度し堂々と米韓同盟を壊し始めた…
米国の踏み絵を蹴飛ばした韓国
エスパー長官は「中国による香港国家安全維持法の強要と、台湾を不安定にするに強圧的な行動」にも懸念を表明しています。ただ、日本側の発表資料には「香港」「台湾」に触れたエスパー長官の発言のくだりはありません。
いずれにせよ、こんな、中国に弓を引く会議に韓国は参加できない。韓国には、今回の日米韓防衛相会談が米国に突き付けられた「踏み絵」に見えたことでしょう。そして中国に忠義を示すため、踏み絵を蹴飛ばして見せたのです。
――では今後、韓国は3か国の防衛相会談に参加しない?
鈴置:米中対立は激しくなる一方。これを考えると、日米韓防衛相会談そのものが消滅する可能性が高い。下手すると「米韓」防衛相会談も、「米韓」首脳会談も開けなくなります。米国が踏み絵――「会談後に発表する共同声明に中国非難を盛り込もう」と提案すれば。
反米の本性を現した文在寅政権
――この先、米韓同盟はどうなるのでしょう?
鈴置:文在寅政権は3か国防衛相会談を蹴り飛ばしたのを期に本性を現しました。 中朝を仮想敵とする米韓同盟に異を唱え始めたのです。この政権の中枢は、大統領を筆頭に「米韓同盟こそが諸悪の根源」と信じる左派で固められています。
9月2日、李仁栄(イ・イニョン)統一部長官が「米国との軍事同盟から脱しよう」と呼びかけました。左派系のキリスト教団体を訪問した時のことです。東亜日報の「李仁栄『韓米同盟は冷戦同盟…平和同盟に転換しうる』」(9月2日、韓国語版)から発言を引きます。
・韓米関係がある時点には軍事同盟と冷戦同盟を脱皮し、平和同盟に転換できると考える。
「平和同盟」がいったい何を指すのか、李仁栄長官の発言からはうかがえません。そもそもそんなものが存在するのか、首をかしげざるを得ません。ひとつ言えるのは韓国の閣僚が「米国との軍事同盟は破棄しよう」と主張したことです。
――どんな文脈からこの発言が飛び出したのですか?
鈴置:直前に「米朝関係の進展にかかわらず、韓国は北朝鮮との関係改善に取り組む方針である」との趣旨で発言しています。合わせて読めば「いずれ、北朝鮮は敵ではなくなる。そうなったら米韓の軍事同盟は不要だ」との主張です。もちろん「中国は韓国にとって敵ではない」との前提で語っています。
左派に限らず普通の人も、ほとんどの保守も韓国人は中国を敵に回すつもりは毛頭ない。「北朝鮮も敵でなくなった時には米国との軍事同盟は不用」との考え方は韓国でかなりの説得力を持ちます。
共通の敵のない同盟の存在意義は薄い。それどころか韓国の場合、重荷になっていく。米中対立が深化するほどに、米国との同盟を維持する韓国は中国に憎まれるのですから。
米国の要求を拒絶した駐米大使
――韓国の閣僚が同盟廃棄を言い出すとは、米政府は驚いたでしょうね。
鈴置:もっと驚いたのは、駐米韓国大使までが米韓同盟に疑義を示したことでしょう。9月3日、イ・スヒョク駐米韓国大使はジョージ・ワシントン大学・韓国研究所で講演した時の発言です。
朝鮮日報の「米国が中国牽制に参加を要求するのに…駐米大使『安保は米国、経済は中国』」(9月5日、韓国語版)の前文が以下です。
・イ・スヒョク駐米大使が「韓米同盟の未来の姿を深く考えなければならない」とし「中国が最大の貿易相手という事実を考慮せねばならぬ」と語った。鋭い米中対立の中、連日、同盟国に支持を訴える米国に一線を引く発言を駐米大使が公開的にしたということだ。
イ・スヒョク大使は「我が国は安保の側面では米国を頼っている」とも語り、米国の重要性に言及してはいます。が、その次に「安保だけでは国家の存続は難しい」と述べて、中国包囲網に参加せよとの米国の要求を拒んだのです。
「同盟の未来の姿を深く考えなければならない」との発言は、「うるさいことを言うなら、中国側に寝返ってもいいのだぞ」との米国に対する脅しでしょう。
この大使は6月3日、韓国メディアの特派員とのオンライン懇談会で「(米中の間で)選択を迫られる国ではなく、もはや我々が選択する国になったとの自負心を持っている」と述べています(「文在寅の懲りぬ『米中二股外交』 先進国になった!と国民をおだてつつ…」参照)
米中を天秤にかけて「板挟み」を乗り切るという韓国の作戦を体現している人なのです。特に今回は、韓国メディアの特派員との懇談会という内輪の席ではなく、公開の場で――米国人の前で、「同盟を辞めてもいいのだぞ」と言い放ったのです。
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