郵便局網を使って地方を活性化させる――増田寛也(日本郵政株式会社取締役兼代表執行役社長)【佐藤優の頂上対決】

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まずお詫び行脚から

増田 ただ不正は不正で、正さなければいけません。たぶん、最初は小さなことから始まったのだと思いますが、それがどんどん蔓延していった。日本郵政グループには、正社員22万人、非正規社員19万人で、合わせて約41万人います。不正に関わったのは一部ですが、結果、みんなが白い目で見られるようになってしまった。その中で、全体の士気をどのように保っていくかは非常に大きな問題で、いま試行錯誤しているところです。

佐藤 6月下旬時点で2448人が処分されたと新聞にありました。組織内部がガタガタになってもおかしくない。

増田 その最中でも、他の社員は雨の日も風の日も、郵便を配ったり窓口で応対したりしています。本来なら私が各地の郵便局を飛び回って言葉を掛けたいところですが、やはりこのコロナ禍の状況下ではそうもいかない。だからリモートでやっていて、先ほども水害に遭った熊本県八代市のゆうちょ銀行社員と話していました。でもリモートだと、どこかもどかしいですね。熱量が伝わりにくい。

佐藤 このコロナ禍の中でも、郵便がきちんと機能しているのは極めて重要なことです。

増田 ええ、みんながエッセンシャルワーカーと呼ばれる存在です。

佐藤 先日、オーストラリアの友人に本を送ろうとしたんです。でもアマゾンからも紀伊國屋書店からも送れない。そこで自宅にあった本を持って近所の郵便局に行ったら「航空便もSAL便(エコノミー航空便)も受け付けていません」と言われ、そこで初めて事情がわかりました。

増田 いま国際郵便物の引き受けは一時的に停止しています。百数十カ国が対象になっていますね。

佐藤 ただ、3カ月くらいかかるけれど、船便で送れるとも言われたんですよ。そこで送り状に必要事項を書き込んでいると、現地に着いた後、何らかの理由で届けられない場合は放棄するという項目がある。そこにチェックを入れたら、窓口から「放棄するに印をつけると、国によっては扱いが雑になって配達されない可能性も出てくる。(日本に)戻すに印をつけたほうがいいですよ」と親切に教えてくれました。

増田 国際郵便で代替手段が取れるところはそれをご案内するようにしていますが、きちんと応対していますね。

佐藤 丁寧であると同時に、やはり教育が行き届いていると思いました。

増田 ありがたいお話です。そこは私共が一番気を付けているところです。

佐藤 社員の質はとても高いと思います。だから早晩、かんぽの信頼も取り戻せると思います。

増田 再開するにあたっては、まずお詫び行脚から始めます。だから社員も辛い思いをすると思いますが、ここはとにかく乗り越えていかなければならないところです。

佐藤 私は大学で教えていますが、かんぽの学資保険で入学金の準備をした学生はけっこういます。将来設計と結びついていますから、再開を待つ人も多いはずです。

増田 学資保険や養老保険、加えて終身保険は、かんぽの生命線です。いま、いろいろな再発防止策を作って徹底させていて、自信を持って再開できるまであと少しというところまで来ています。

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