「ユーチューバー」同士の著作権訴訟の行方 グーグル側の問題は?

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 共通の趣味を持つ者同士、「同属嫌悪」で嫉妬やライバル心が芽生えるのもまた世の常である。前代未聞のユーチューバー同士の争いは、裁判沙汰に発展。その行方に注目が集まっている。

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 巣ごもり暮らしが定着したニッポンでは、動画投稿サイトが猶(なお)のこと人気を集めている。最大手ユーチューブの累計チャンネル登録数は実に2万9343(8月現在)。8月19日に京都地裁で第1回の口頭弁論が開かれた裁判では、チャンネルを開設した投稿者同士が、動画に「著作権侵害」があったか否かを巡り争っている。

 訴状によれば、原告は編み物を製作する過程や作品を動画として投稿する富山県在住の40代女性で、広告料などで月1万2千円前後の収入を得ていた。今年1月下旬から2月にかけて、彼女はポーチとブックカバーを編む動画を2本投稿する。だが、これを運営元であるグーグルは、外部からの「著作権侵害に関する通知」を受けたとして削除してしまう。

 その「通知」を送った人物が、裁判で被告となった京都市内在住の40代女性と男性だ。この二人もまた共同で、原告女性と同じく「編み物動画」を投稿していた。

「私の知る限り、ユーチューバー同士が著作権を巡って法廷で争うのは、日本で初めてのことです」

 とは、原告側の代理人を務める加藤幸英弁護士だ。

「ユーチューブでは、著作権侵害の通知があった動画は自動的に非公開となってしまいます。それを防ぐには、投稿した本人が90日以内にグーグルに異議を申し立てれば検討対象になりますが、そうするとグーグルや違反を通知してきた人間に、自分の氏名や住所など個人情報が伝えられてしまう。そこに抵抗を感じる人も少なくありません」

「編み物は日常品」

 さらに、加藤弁護士はこう指摘する。

「原告の当該動画は、『かぎ針編み』という編み方で製作する内容で、スキーに例えればボーゲンのようなもの。世のお母さん方がよく使う方法を用いている。また平成24年の知財高裁判決で、問題となった編み物自体は著作物として認められないという判断が出ています。高度なオリジナリティが認められる芸術作品と違い、あくまで編み物は日常品。著作物と認められるには、高いハードルがあります」

 斯様(かよう)な事情を考慮せず、一方的に「著作権侵害」を通知したのは不当だとして、被告に対し110万円の損害賠償を求めているのだ。

 ネットトラブルに詳しいITジャーナリストの三上洋氏が解説する。

「イタズラや嫌がらせを含め、ユーチューブには日々膨大な量の『著作権侵害通知』が寄せられますから、コレを受けて非公開とするのは一時的な運営側の措置に過ぎません。ですから、不当な通知を受けたら多少煩わしくてもきちんと異議申し立てをする必要があります。現状では仕方のないこととはいえ、それがいい仕組みとは言えませんし、何ともやりづらい世界だなと思いますね。今回の件でも、日本の判例が考慮されていないなど、グーグルはまだ各国の実情に即した対応ができていません。そうしなければ仕事が回らないのかもしれませんが、誰が通知を送っても削除対応してしまうのは問題ですね」

 今後、登録者の増加に伴いこの種の裁判も増えるだろう。盛んにユーチューバーを持て囃して投稿を推奨、巨万の富を得た運営側の杜撰さも、訴訟では明らかにされるべきではないだろうか。

週刊新潮 2020年9月3日号掲載

ワイド特集「積み残しの宿題」より

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