「朝鮮が滅びたのは日本のせいではない」…屈辱の原因と過程に学べない文政権

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自ら国を守ることができない国を助ける友好国はどこにもいない

 さて、日清戦争勝利後、朝鮮で本格的に利権を得ようとした日本の計画は、閔妃の手管によって支障をきたし、これによって日本は目の上のこぶだった閔妃を除去するための工作に着手する。

 日本は三浦梧樓を朝鮮駐在特命全権公使に任命し、三浦の指揮の下で浪人たちを動員して閔妃を残酷に殺害してしまう。乙未事変である。

 閔妃殺害事件は、韓国人たちの日本に対する憎悪心と敵愾心を呼び起こす決定的事件だった。

 閔妃は、殺害の動機こそ違うものの、日本でなくとも朝鮮の民たちに殺されたにちがいないと、私は思う。

 言葉は極めて悪いが、彼女は韓国歴史上において、5本の指に入る悪女だった。

 怖じ気づいた高宗は、そのままロシア公館に逃げて隠れてしまった。閔妃一派の除去に成功した日本は、興宣大院君を担いで、親日派を中心に内閣を整えている。

 この時から朝鮮は亡国の道にはいったと言っても過言ではあるまい。

 自分の庭で外国の刺客によって妻が無残に殺され、遺体が燃やされたというのに、王という者が見せた行動はとても口にするのも恥ずかしいものだった。

 もし、このとき高宗が、ロシア公館に逃げ隠れることなく、日本の蛮行に対して「憤氣撑天」の決意を示し、徹底的に戒めることを世界に公表していたなら、おそらく朝鮮の運命は大きく変わったかもしれない。

 今や列強は、先を争って朝鮮での利権を得ようと飛びついた。

 それから1年後、ロシア公使館に身を寄せていた高宗が、ようやく世の外に出て大韓帝国を宣布し、自らを皇帝と称した。

 それも朝野からの上訴をいやいや受け入れ、仕方なく行われた結果だった。しかし、すでに亡国の道に入った国が国号を変え、自らを皇帝と称し、死んだ王妃を皇后と追尊しても何の意味があるだろうか。

 複雑な利害関係で絡み合っている国際政治の舞台で、自ら国を守ることができない国を助ける友好国はどこにもいない。

日韓の外交摩擦、日米韓安保破棄はかつての亡国の行状に連なる

 朝鮮の運命はすでに乙未事変後に決まったと見るべきである。

 その結果、朝鮮は35年間の植民統治という汚辱の歳月を甘受しなければならなかった。自業自得としか言えない結果だった。自らを保護できない無能な君主を戴くのは、人民にとっては恐怖でしかない。

 近代中国の思想家・梁其超は、朝鮮のいわゆる指導層という者たちが、私利私欲に目が眩んで、国家に対する公的観念が希薄なことを嘆いた。

 日本政府は日韓併合条約を公布する日にちをすでに決めていた。そこに大韓帝国の政府から、純宗皇帝即位記念日を迎えるにあたり祝宴を開くので、公布発表を数日延ばしてもらいたいと“陳情”があったという。

《この日、大宴会に臣下たちが集まって普段のように楽しみ、日本統監も外国使臣の例に従って、使臣らに交じって祝賀し喜んだ。世界各国のおよそ血気のある者たちは、韓国の群臣たちの達観した姿に驚かざるを得なかった》(梁其超「朝鮮の亡国を記録する」)

 彼は、朝鮮は内部から崩れ落ちたとみた。

「朝鮮を滅ぼしたのは最初は中国人、続いてロシア人、最後は日本人だった。しかし、中ロ日人が朝鮮を滅ぼしたのではなく、朝鮮が自ら滅びたのだ」

 2020年現在、従軍慰安婦問題と徴用工の賠償問題をめぐって行われている日韓間の外交摩擦。日米韓基本安保の軸を押し倒そうとする文在寅政府の誤った判断と無能。

 それらは、これまで見てきた大韓帝国末期、この地で起こった亡国の行状とさして変わらない。

 韓国は、歴史から何も学べなかった。

 非難は飛び交うが、反省はない。月の形を論じて月を指せば、指が間違っていると言って月を見ようとしない。

 為政者の腐敗と無能で国を失ったことが、さほど遠い昔のことではないのに、韓国は反省することなくこれを繰り返そうとしている。

 よく人間は歴史から何も学べず、ただ繰り返すだけだという。

 私たちが誤った歴史を繰り返すのは、歴史の結果だけを重視し、その原因と過程を軽視するからだ。

 もし、私たちが自己催眠的な集団記憶にとらわれ、朝鮮の亡国の原因を日本のせいにすることで、私たちの過ちと過ちに目をつぶってしまうなら、恥辱の歴史を繰り返すかも知れない。

李東原(イ・ドンウォン)
日韓関係史が専門の評論家

週刊新潮WEB取材班編集

2020年9月5日掲載

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