「次期首相の菅氏、“安重根は犯罪者”と発言」を韓国メディアが蒸し返し
「菅新首相」を待ち構える韓国「徴用工」差し押さえ資産の年内現金化
韓国大統領府(青瓦台)の関係者の間では、過去の菅義偉官房長官の発言が頭をよぎり、「菅ファイル」が急ぎ編集されているという。「徴用工」差し押さえ資産の年内現金化など、「菅新首相」を待ち構える難題は少なくない。韓国の大学で教鞭を取る、さる日本人識者によるリポート。
9月2日、ソウル聯合ニュースは、「首相になる人が言った“安重根は犯罪者”」などという見出しで、菅官房長官の過去の言動について報じた。
日本政府のスポークスマンとして折りに触れ、「伊藤博文を暗殺した安重根はテロリストだ」と菅氏は主張してきた。
韓国メディアとしては単にそのことを蒸し返したに過ぎないのだが、裏返せば、韓国でも「次の総理大臣は菅で決まり」が既定路線ということだ。
これもそのうち蒸し返されるだろうが、ちょうど1年前の9月8日、テレビ朝日「サンデーLIVE!!」に生出演したとき、菅氏はこう話している。
「なぜ日韓関係がこんなにこじれてきたということはです。これはすべて韓国に責任があると見ています」(発言ママ)
隣国の官房長官によるこの啖呵を、韓国の青瓦台関係者がだれ一人キャッチしていないというのは考えにくい。
実際、在韓特派員に聞いてみると、
「ある程度の職位の人たちによって、その情報は共有されていました。ただ、その発言がなされた頃の青瓦台は、来年9月の任期まで安倍首相が職務を全うするだろうと考えていたことも事実なんですけれどね」
それほど日韓関係が大事だと両国民が納得できるかどうか
しかも菅氏は現在71歳であり、かっちりとした派閥を持たない。青瓦台のみならず、韓国全体として菅政権の誕生は全く現実味を帯びていなかった。
「だから、青瓦台の関係者は『菅ファイル』を編集し直している最中だと思いますよ」
ちなみに、戦後の総理大臣初就任の年齢を見ると、最も高齢なのが昭和20年10月の幣原喜重郎首相で73歳、次いで、平成3年11月の宮澤喜一首相が72歳であり、3番目が平成6年6月の村山富市首相で70歳である。
安倍首相が辞意を表明した28日の夕方以降、韓国では、日本の次期首相による日韓関係改善への努力に対する期待と冷静な見方が交錯していた。
まだ菅氏が総裁選への立候補をまったく口にしていなかった先週末から週明けにかけて、朝鮮日報などの保守系メディアは期待感を表す記事を掲載していたが、一方で、リベラル系のハンギョレは、日韓双方の立場の違いがある以上、関係改善は困難だとの見通しを立てている。
そんな中での菅氏による総裁選立候補の表明は、韓国メディアにおいて、日韓関係悪化の懸念を増幅させていることだろう。戦後最悪と言われる両国関係だが、1年前の菅氏の発言は、それをさらに悪化させることも十分に予感させるからだ。
私のように、日本人として韓国に住み、韓国の学生に日本のことを教えている立場からすると、日韓関係の改善は望ましいことではある。
だが、その立場から見ても、いまこのタイミングでの首相交代が日韓関係に良い影響を与えるとは思えない。
青瓦台の関係者はこう話す。
「まず、日本にしても韓国にしても、それほどまでに日韓関係が大事だと国民が納得できるかどうかという問題があります」
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