中国「孔子学院」、日本に15カ所で菅官房長官も「動向注視」 スパイ工作機関の闇

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 菅義偉官房長官は8月26日の記者会見で、米国が中国の「孔子学院」を外国公館に指定すると発表したことについて、「わが国も(孔子学院の)動向は注視している」と発言した。中国語や中国文化を普及するための機関である孔子学院は、世界162カ国・地域に約550カ所(2019年12月現在)あり、日本にも15カ所あるが、実情は中国共産党の“スパイ工作機関”だという。

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 米国のポンペイオ国務長官は8月13日、孔子学院に対して「中国の政治的な宣伝を行い、教育に悪影響を及ぼしている。外国の大使館と同じ、外国政府の機関に指定する」との声明を発表した。これで今後、孔子学院には、職員の個人情報や運営資金などを米国政府に届け出る義務が生じるという。

 孔子学院が設立されたのは2004年。まず韓国のソウルに設置された。中国の大学と諸外国の大学が提携し、中国語をはじめ、漢方、中国茶、太極拳、演劇、水墨画、書法、生け花などを教えるという。孔子の名を冠しているが、孔子哲学や儒教を学ぶことはできない。

 運営するのは、中国教育部が管轄する国家漢語国際推進指導小組弁公室(漢弁)。この漢弁が、孔子学院の開設資金として10万ドル(約1053万円)を大学に提供、運営費は原則、最初の3年間だけ漢弁が負担する。もっとも、その後の運営費が負担できない場合、漢弁は資金援助を続けるという。孔子学院で教える中国人教師の給与や海外生活手当も負担するそうだから、大学にとっては有難い話だ。

 日本では、2005年の立命館大学が孔子学院を開設したのを皮切りに、06年は桜美林大学、07年は札幌大学、早稲田大学。08年は工学院大学、09年は関西外国語大学など、15大学で開設している。

FBIが捜査に乗り出した

 アメリカでは、最盛期に120校の孔子学院が開設された。急速に増えた背景には、大学の経営難が挙げられる。とはいえ、14年6月、アメリカの大学教授協会から「孔子学院は中国国家の手足として機能していて、『学問の自由』が無視されている」と批判されたのをきっかけに、閉鎖する動きが出ている。

「アメリカが政府レベルで孔子学院の捜査に乗り出したのは、2018年2月です。クリストファー・ライFBI長官が、孔子学院はスパイ活動の疑いで捜査の対象にしていると発言しました」

 と解説するのは、学習院女子大学の石澤靖治教授。ジャーナリストでもある同氏は、昨年12月、『アメリカ 情報・文化支配の終焉』(PHP新書)を出版、孔子学院が中国共産党の諜報・言論弾圧活動と連動していると指摘した。

「孔子学院は、中国共産党中央統一戦線工作部の支配下にあると言われています。統一戦線出身の人間が、孔子学院を運営する漢弁のトップを務めていたからです」

 設立から2007年まで、漢弁の総責任者を統一戦線工作部部長の劉延東が務めている。

「孔子学院が拠点となって、反中国的な言動を行った人の封じ込めを行っています。アメリカには、各地に中国人留学生を支援する中国学生学者連合会(CSSA)がありますが、この組織と孔子学院が連携しているのです。大学で中国に批判的な発言をする教員がいれば、CSSAの学生数人を使って、教員を問い詰めます。或いは、領事館に通報することもあります。領事館から教員宛てにメールが届き、言動を慎重に行うように注意されるのです」

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