「コロナはピークアウト」政府分科会が発表 本当に恐れるべきは「かくれ熱中症」?
高齢者の熱中症が急増
冒頭でも述べたが、熱中症は侮れない。しかも、高齢者の命を守るための新型コロナ感染予防対策の煽りで、高齢者が危機に陥っているようなのだ。たかせクリニック理事長で「かくれ脱水」委員会委員の高瀬義昌医師によれば、
「今年は在宅診療で回っていても、脱水や熱中症を訴える方が多く、対応で休みもありません。また熱中症で熱が上がると、新型コロナの症状と見分けがつかないのが問題です。僕らのようなかかりつけ医が“この方は濃厚接触の疑いはありませんよ”と一言添えると、病院側も安心して受け入れられますが、かかりつけ医がいない高齢者の場合、救急車を呼んでもコロナへの感染を疑われ、何時間も立ち往生した、という例が何件もあるほどです」
というから、かかりつけ医がいるなら相談した方がよいだろう。また、
「太もも周りの筋肉には水分と電解質が蓄えられます。しかし筋肉が減っている高齢者は、気づかないうちに、いわゆる“かくれ熱中症”になるリスクが高いのです。新型コロナ対策で巣ごもりしていると筋肉量が減り、炭水化物をとることが多くなり、筋肉を作るたんぱく質を摂取する機会が減りがちです。朝夕に散歩をするなど、体を動かす機会を疎かにしないこと。また、経口補水液を常備しておくといいです」
感染を恐れすぎての代償の例は、数限りない。老年精神医学が専門の和田秀樹医師が指摘する。
「高齢者ほど病院内で感染することを恐れ、病院に来ません。外出が減って鬱になった人であれば、薬で治療できるのに、病院に来ないから悪化してしまう。また外出を控えているうちに、身体能力は大幅に低下しがちです。入院している人は、新型コロナ対策で面会できないうちに、鬱になる場合もあります。やはり、会って話をしないとケアできません。コロナを恐れてデイサービスを休んでいるうちに、認知症が悪化するケースもあります。認知症は2000年ごろから病状の進行が遅くなり、僕はデイサービスの利用効果だと思っていましたが、これでは過去に戻ってしまいます」
こうして「認知症パンデミックが起きる」と、先の石蔵氏は指摘するが、どうしたらそこに巻き込まれずにすむだろうか。おくむらメモリークリニックの奥村歩院長が言う。
「コロナ禍で外出や人との接触が減り、脳の健康が悪化して、“なにもやる気がない”と訴える人が増えています。脳が疲れ、鬱状態に陥っているのです。要因の一つは、実はインターネットやSNSと向き合う時間が増えたことです。コロナに関する情報をさらに得ようとしてネットを見続け、情報過多になり、脳が疲れてしまうのです。また、高齢男性に多いのは、社会とつながらなければ、という強迫観念からSNSを始め、脳が疲れてしまうケースです。新しいことを始めるのは、たしかに脳への刺激になりますが、使いすぎはよくありません。それよりも五感を刺激しましょう。公園に行って草の臭いをかぎ、セミの声を聴き、季節を感じるのです。また、感染に気をつけつつ人と交流する。そのほうが無理に始めたSNSより効果的です」
それにしても、新型コロナを怖れるあまりの代償の大きさと、結果、命が守られないという事実には、愕然とするほかない。むろん手洗いやマスクは必要だろうが、それだけ励行したら、あとはすべてをコロナ以前に戻す――。最も命が守られる道がそれであることに、もはや疑いを差しはさむ余地はなかろう。
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