なぜ僕たちは「社交ダンス」に魅了されたのか 周防正行×二宮敦人

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男の3倍は女性がいる世界

周防 そもそも、なぜ大学で競技ダンスをやろうと思ったんですか。

二宮 ぼくは運動音痴で、中学、高校と部員1人の美術部にいて、女の子とまともに話したこともなかったんです。それが大学に入ってすぐ女性の先輩に「美術部出身者が有利」とか「初心者でも活躍できる」とかって勧誘されて、ふらふらと仮入部したんです。そうしたら、そこは、手を繋ぐのは当たり前。両手を絡ませたり、場合によっては腰をがっつり掴んだり、半身がぴったり重なったり、太ももと太ももが擦れあったりする世界で。男の3倍は女性がいるので、男というだけでちやほやされるんです。ちやほやされているうちに、気づけば沼にどっぷりはまっていました。

周防 ああ、入部のきっかけも書かれた通りなんだ。

二宮 ノンフィクションですから。

周防 僕が「Shall we ダンス?」の取材を始めたのは、電車の窓から外の風景を眺めていたら、ダンス教室が目に入ったからなんです。そういえば子供のころから、駅そばの雑居ビルにはダンス教室があったよな。電車から見える窓に美しい女性が立っていたりしたら、サラリーマンが興味を持って、ふらりと行くなんてこともあるかもしれないな。そう考えたらサラリーマンのちょっとした冒険というか、日常からの逸脱の物語を描けるかなって漠然と思って。

二宮 映画そのままだったんですね。

周防 でも、ダンス教室で踊っている人たちを僕はまるで知らなかったんです。ある時、東宝のプロデューサーにそういう話をしたら、「東宝ダンスホールっていうのがあるから一回見に行きませんか」と誘ってくれて。で、行ったらびっくりしたんです。こんな顔して踊りを楽しんでる日本人がいるんだっていう。にかっと笑ってね。

二宮 楽しそう。

周防 会社帰りとおぼしきサラリーマンが更衣室に消えて、出てくるとピンと背筋を伸ばして見違えるようでね、ばっちりキメて女性をエスコートしてる。俺、こんな日本人は知らないぞと思って取材を始めたんですよ。

二宮 社交ダンス教室がこんなに多い国もないと思います。日本は世界一の競技人口っていいますもんね。

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