高輪ゲートウェイ駅は人間よりロボット 無人化する鉄道事情
今年3月14日に開業した高輪ゲートウェイ駅は、約半世紀ぶりとなる山手線の新駅ということで世間の耳目を集めた。
高輪ゲートウェイ駅が注目されたのは、山手線の新駅という理由だけではない。高輪ゲートウェイ駅という駅名が山手線らしからぬ奇抜なものだったこと、駅名標が明朝体だったことなど、これまでの駅とは明らかに異なっている点が注目された。
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そうしたなかでも、高輪ゲートウェイ駅の大きな特徴ともいえるのが大規模な省人化・無人化が図られている点といえる。
JR東日本が未来型の駅と胸を張るように、高輪ゲートウェイ駅には清掃や警備、案内などを担当するロボットがせわしなく動き回っている。本来、これらの業務は人間の手によっておこなわれてきたが、それらの作業がロボットに代替された。
さらに新型コロナウイルスの感染拡大が深刻になると、消毒を担当するロボットまで導入された。高輪ゲートウェイ駅で働くスタッフは、もはや人間よりロボットの方が目立つようになっている。今後も感染拡大防止の観点から、ロボットによる代替が進むだろう。
そのため、高輪ゲートウェイ駅からは人の息遣いが感じられなくなりつつある。すべての業務がロボットにお任せとなり、駅員などは不要になる。そんな駅の未来は、すぐ目の前まで来ている。
鉄道そのものの業務ではないが、高輪ゲートウェイ駅の売店は無人化の実証店舗になっており、人と接することなく買い物ができるようなシステムが試験的に採用されている。こうした無人店舗も段階的に広まっていくだろう。
鉄道は安全第一を是としている。鉄道を安全に運行するためには、細心の注意が必要になることは言うまでもない。
万が一でも事故を起こせば、影響は鉄道会社が所管する範囲だけにとどまらない。列車が遅延すれば通勤・通学者に支障をきたし、物流も混乱する。経済にも影響を及ぼす。
もはや、鉄道は社会を支えるインフラだ。多少なりとも大げさに言えば、鉄道の事故は社会全体を揺るがす一大事でもある。だから鉄道会社は、運行時はもとより、夜間の保守点検も入念に実施し、鉄道事故は絶対に起こさないことに傾注する。
不測の事態に対しても万全の体制を整える。それでも駆け込み乗車やスマホを見ながらホームを歩く利用者の行動を予測することは難しかった。
人間でさえ人間の行動を予測するのは難しい。ましてロボットは不測の事態に柔軟な対応ができない。そうした理由もあって、これまでの鉄道業界は無人化・省人化に積極的とは決していえなかった。
省人化・無人化は経営の効率化に有効ではあるものの、安全を最優先に考えれば人員削減は簡単に断行できない。安全を確保するために慎重を期し、過分とも思えるほど多くの人員を各所に配置する。鉄道業界は人員削減を二の次、三の次にしてきた。
それでも、ドアに物が挟まったなどちょっとしたトラブルは日常茶飯事のように起こる。遅延は石橋を叩いても渡らないぐらい慎重さが求められてきた鉄道業界の考え方、体質が大きな転換期を迎えている。そこには機械で代替できる業務が増えたこと、技術が上がってロボットにも事態の想定ができるようになったこと、ロボットの精度が上がりミスが減ったことなどが一因にある。
こうしてロボットが人を代替するようになれば、利用者の多い山手線をはじめ大都市の主要駅も無人駅化していくことは想像に難くない。
ロボットで代替せずとも、すでに利用者の少ないローカル線は無人駅化している。また、ローカル線なら運転士が車掌の役割を兼務するワンマン運転も珍しくない。
そんな無人駅化や列車のワンマン運転化の波が、ついに首都圏にも及ぼうとしている。
今年6月、共同通信が「2024年度をめどに、JR東日本が京浜東北線をワンマン運転化する」と報道した。
京浜東北線は、埼玉県の大宮駅から東京駅を通り神奈川県の桜木町駅までを縦断する首都圏の大動脈だ。南は根岸線と相互乗り入れをしており、首都圏でも屈指の乗降客数を誇る。
そんな多くの人が利用する京浜東北線をワンマン運転化するという報道は、鉄道業界に大きな衝撃をもたらした。仮に京浜東北線のワンマン運転化が実現したら、すべての鉄道路線でワンマン運転が可能ということが実証されるからだ。
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