「松岡修造」を一流にした”麻雀漬け”の日々 現在はジュニアの育成に注力(小林信也)
麻雀に没頭する日々
松岡は、テニスから離れかけたことがある。高校1年の春から夏のころだ。
「ずっと才能がないと言われていた。それでも大会では勝っていた。ところが、試合で負けるようになってテニスに集中できなくなったんです」
中3のころ身長は164センチ、ごく普通の体格だった。
「テニスの練習に行かず、友だちの家で麻雀に没頭する日々が続きました。当時流行っていた麻雀漫画を読んだり、寝ても覚めても頭の中は麻雀牌だらけでした」
テニス一筋に見える修造にもそんな日々があった。ちょうどその時期、背がグングンと伸びた。高1の終わりには185センチになっていた。極端な成長期に激しい運動をしなかったのは無意識の防衛本能だったのかもしれない。ある日、ふと自分を省みてもう一度テニスをと思い、慶應高からテニスの名門柳川高への転校を決意する。
松岡は振り返る。
「麻雀に熱中してよかった。回り道だとは思っていません。自分のテニスがガラリと変わったからです。麻雀は耐える力と読む力を教えてくれました。一か八かの勝負はダメ。考えて攻めるようになった。それまではずっと守りのテニスで、サービスエースも取れなかった。背が伸びたのもあるでしょうが、サービスが武器になった。攻撃型のテニスに変わったのです」
松岡修造はテレビに出ていない時間、ジュニアの指導に携わり、センターコートで優勝を勝ち取る日本選手が現れる日のために熱い情熱を注いでいる。それを忘れてはならない。そして、「人生には無駄な経験はない。若者が心の向くまま、周囲から見れば道を外れることも、重要な夢へのプロセスだ」と、大人たちは胸にとどめておきたい。
[2/2ページ]