渡哲也さん「家族葬」に関係者は違和感 お別れ会も執り行われず…

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「スターの役割なんだよ」

 確かに、実直で派手さを好まない渡の人柄を考えれば、最期は身内だけに囲まれながら旅立つことを望んだとしても不思議はない。コロナ禍の只中でもあり、自らの葬儀やお別れ会のために多くの人々が集まり、皆に迷惑をかけるとの懸念もあったに違いない。だが、金宇氏はこう続けるのだ。

「渡は裕さんに惚れ込んで、生き方すべてに憧れていた。災害が起きると石原プロが炊き出しに訪れるでしょう。もともとは裕さんや俺が考案して始めた炊き出しだけど、渡はそれを見て“自分もやらなければ”と思ったのだろう。苦しんでいる人や困っている人を笑顔にする。それがスターの役割なんだよ。だからこそ、渡を応援してくれたファンのためにもお別れ会は開くべきだと思う。応援してくれた人たちが日本中にいるわけだから。もちろん、渡の気持ちは分かるけど、そこは事務所の連中がしっかり差配しないとダメだよ」

 石原家をよく知る芸能関係者もこれに首肯する。

「渡さんの気持ちは理解できます。ただ、斎場の外からでも手を合わせたいと切望する関係者が大勢いたのも事実です。志村けんさんのようにコロナが収束してからお別れ会を行うことはできないのでしょうか。また、訃報に際して吉永小百合は即座に追悼メッセージを寄せたのに、まき子夫人がコメントを発表しないことにも疑問が残ります。お年で体調が悪いのかもしれませんが、それなら石原プロのスタッフが代わりに作成して、彼女の名前で発表すればいいだけのこと。“裕次郎亡き後、石原プロの看板を支えてくれたことに感謝します”といったコメントが出ないことで、渡さんとの間にわだかまりがあったのではないかとの無用な憶測を呼びかねません。密葬の差配もそうですが、そうした事情を汲み取ってまき子夫人に進言し、組織を仕切れる存在がいまの石原プロにいないことが悔やまれます。事務方として石原プロ再建に奔走し、4年前に亡くなった小林正彦専務が健在であれば対応も違っていたはずです」

 ファンだけでなく、メディアや共演者からも慕われ、一目置かれた老舗事務所の姿はもはや窺えない。無論、すべては哲学に貫かれた故人の遺志ゆえのことだろうが、誰からも愛されたスターの野辺送りにしては、何とも寂しい最期になってしまった。

 最後まで「ボス」裕次郎のために闘い抜いた渡哲也が天に召され、石原プロは名実ともにその役割を終えようとしている。

週刊新潮 2020年8月27日号掲載

特集「『渡哲也』秘せられた死」より

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