コロワイド、大戸屋への敵対的TOB不調、“リアル半沢直樹”は第二幕へ
敵対的TOBへ
5月25日には大戸屋の窪田健一社長が会見を開き、「コロワイドの株主提案の先に、大戸屋の未来がないことは断言できる」と猛反論。
両社の意見は平行線のまま、大戸屋は株主総会を迎えた。だが、筆頭株主であるコロワイド側からの出席者はわずか1名だった。同社から株主提案の説明を行うこともなく、その提案には誰一人、賛同の拍手をしなかった。
「結局、大戸屋はプロキシーファイトでコロワイドに勝利し、株主提案を否決しました。ただ、それでも諦めるコロワイドではなかった。7月9日、大戸屋株の公開買い付け(TOB)を発表します。当時、2113円だった大戸屋株を3081円で買い付けるというものでした」(同)
時価より45%も高値で買い取るというのである。これに対し、大戸屋は反対を表明し、ついに敵対的TOBへと発展した。その公開買付期間が8月25日で完了するはずだったが、前述の通り、コロワイドは買付予定株数の下限引き下げ、期間延長を発表したのだ。
「コロワイド有利という報道が圧倒的でしたが、うまくいかなかったようですね。どの程度の応募があったかは分かりませんが、同社の発表には〈当初の買付予定数の下限に達しないことが明らかになった〉とあるので、微妙に足りないというレベルではなかったのかもしれません」(同)
大戸屋はなぜ勝てたのだろうか。
「大戸屋の株主の6割以上は個人株主と言われています。機関投資家であれば、45%ものプレミアムがつけばドライに売ってしまうでしょうが、“ファン株主”の層が思いのほか厚く、金では動かなかったということでしょう。もしかすると、この結果を見て、買付に応じた個人株主が断りを入れてくる可能性も考えられます。また、この間のコロワイド側は、蔵人金男会長がM資金詐欺の被害にあっていたことが報じられ、7月30日には福島県郡山市で子会社・レインズインターナショナルの運営する『しゃぶしゃぶ温野菜』がガス爆発を起こすなど様々なことがありました。ネットでは“リアル半沢直樹”などと言われているようですが、あまりに色々なことがありすぎて、ドラマ以上の展開だったというのも影響していると思います」(同)
8月13日には、コロワイドが21年3月期の第1四半期決算を発表。売上は304億8100万円で前年同期比マイナス48・4%。損益は41億8900万円の赤字となった。
翌14日には大戸屋が第1四半期決算を発表。売上は31億6400万円で前年同期比マイナス48・1%。損益は15億800万円の赤字に。いずれもコロナ禍の影響が大きい。
「外食産業はどこも売上が激減しています。ただ、コロワイド傘下のレインズは、今年1~3月の売上収益は255億6700万円でしたが、4~6月は105億7000万円と6割ほど減っていますし、7月の前年対比の売上も良くありません。『牛角』のフランチャイズ店の倒産や、『しゃぶしゃぶ温野菜』の爆発も影響しているのでしょう。一方で大戸屋もそれ以上に良くありません。売上のマイナス幅こそ、コロワイドと同等ですが、会社規模としては10分の1なのに、赤字は3分の1程もある。経営の立て直しは急務でしょう。だからこそ、コロワイドは大戸屋に手を出す必要があるのかという疑問が浮かぶのです」(同)
大戸屋が決算発表と同日に発表したのが、食品の宅配を手がける「オイシックス・ラ・大地」との業務提携だった。
「オイシックスは新鮮な野菜や素材にこだわったミールキットを販売する会社ですが、業務提携自体はネット上では受け入れられているようです。両社とも健康的でおいしいという泥臭いと言っては失礼ですが、愚直に突き詰めている会社です。理念が合致しているからこそ、急展開で話が進んだと思います。提携により年商30億円を目標としているようですが、もちろん上手くいくかどうかはこれからの話。それでも、外食企業である大戸屋にとって、中食にリーチできるという点は面白い取り組みです。業務提携というのはお互いの強みなり、持っていないものを補完し合う相思相愛の関係だと思います。コロワイドのように、筆頭株主になったからお前ら言うこと聞け、という感じで、話し合いをしている最中にも市場で株を買い増しするという、明らかに反友好的な感じでは上手くいきませんよね」(同)
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