新陳代謝のない自民党をプロレス団体に例えると…(KAZUYA)

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 プロレスにおいて団体の顔となるチャンピオンは大事な存在です。さらにいえばチャンピオンになれそうなライバルの存在も同じくらい重要です。

 一人の絶対王者に依存した経営体制は、その人物が怪我や移籍などで出場できなくなった場合、即経営に影響を及ぼすでしょう。だからこそ長期的な展望で若手を育成し、適宜新陳代謝を図る必要が出てきます。

 政治に置き換えてみると、今は安倍晋三チャンピオンが異例の長期政権を築いている状況です。別のユニットはライバルにすらならず、同じユニットの人々もイマイチ存在感を示すことができていないのは、日本にとって悲劇的なことです。新型コロナ対応を見ても、政治が停滞しています。

 ヒール軍団立憲民主党は、起死回生のため別ユニットの国民民主党と合流してチャンピオン安倍に対抗しようとしますが、国民の玉木雄一郎代表は合流せず分党を宣言するなど、イマイチ一体感がありません。そもそも合流したところで、ただの民主党に戻るだけなので、期待感も今ひとつです。

 かつてチャンピオンだった小泉純一郎氏は、山崎拓自民党元副総裁が開いたパーティーに先立つ講演の前に交わした会話で、自民党の次期総裁は岸田文雄氏か石破茂氏になるだろうとの認識を示したとされています。

 石破氏は同ユニットなのに不穏な行動を取り続ける存在です。プロレス的な見方では、石破氏が裏切って敵対ユニットに入ると盛り上がるのですが、あくまで自民党内でチャンピオンを目指すでしょう。

 彼は野党的な動きを見せることがあるので、安倍政権の支持者からは不人気です。しかし各種世論調査を見ると、知名度はあるので常にポスト安倍の上位に位置しています。

 もう一方の岸田政調会長は、チャンピオンの器かと考えると……頼りない感が否めません。時事通信のインタビューでは消費税について問われ「消費税は下げるべきではない。10%に引き上げるだけで、どれだけの年月と努力が求められたか」と答えています。この答え一つ取っても、全く柔軟性がない人物なのだろうと察してしまいます。そして減税をしない理由がこれまでの努力だとするのも全然ダメでしょう。とうていチャンピオンの器ではありません。

 確かに消費税率を上げる努力はあったのでしょう。しかしそれより重要なのは今の日本経済の状況に適した経済政策です。昨年の消費増税で景気の腰が折れ、さらに今年はコロナでボロボロ。イギリスやドイツをはじめ、海外は減税に乗り出す国もありますが、日本はこれまでの努力を理由に後ろ向きです。

 これまでの努力や苦労を理由にしているのは二階俊博幹事長も同じです。減税より給付の方が効果があると、やってもいない消費減税の効果を疑問視する甘利明税調会長もいます。

 今は別ユニットにライバルとなる存在がいないから、消去法で自民党を選んでいる人が多いでしょう。もし今後もこんな硬直化した思考の人ばかりだとすれば、いっそ潰れてしまった方がいいのかもしれません。

KAZUYA
1988年生まれ、北海道出身。2012年、YouTubeで「KAZUYA Channel」を開設し、政治や安全保障に関する話題をほぼ毎日投稿。チャンネル登録者73万人、総視聴数は1億4千万回を超える。近著に『日本人が知っておくべき「日本国憲法」の話』(KKベストセラーズ)

週刊新潮 2020年8月27日号掲載

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