韓国で進む「歴史歪曲禁止法」のとんでもない中身、日韓関係はさらに悪化へ

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実際、「歴史歪曲禁止法」の中身について…

「歴史歪曲禁止法」は、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、その他の出版物または情報通信網を利用し、展示会・集会などで歴史的事実を否定、または著しく縮小・歪曲し、虚偽の事実を流布する行為など、歴史的事実を歪曲して蔑視したり、被害者や遺族を理由なく侮辱した場合、最大7年以下の懲役、または5000万ウォン以下の罰金で処罰することを主な内容としている。

 そして同法案には、2回以上の再犯時には直ちに懲役刑を科すことができ、被害者や遺族の告訴がなくても公訴を提起できるようにする、特例条項が新設されている。

 また、虚偽の事実を摘示して独立有功者等の名誉を毀損する行為、独立有功者等を侮辱する行為、植民統治擁護団体に内応して彼らの主張を賛美・鼓舞、宣伝し、または同調する行為に対する処罰も大幅に強化された。そして、独立有功者等に対する名誉毀損罪、または侮辱罪は、告訴がなかったり、被害者が具体的に明らかにした意思に反しても、公訴を提起できるようにすることで、歴史歪曲勢力に対する強い警告のメッセージも込められているのだ。

 梁議員は、「5・18民主化運動の北朝鮮軍介入説を主張したり、日本軍慰安婦の存在を否定・嘲弄するケースまで発生しているため、これらに対するより強力な処罰が必要だという国民的な声が高かった」と、法案発議の背景を説明した。続いて「今回の制定案が、これまでに傷ついた被害者と遺族の方々の苦痛を少しでも治癒し、国民統合にも寄与することを期待する」と言った。

 現政府と政権与党が、常に口にしている「国民」とは一体誰なのかはさておき、どうしてこのような「とんでもない法」を作る発想をしたのか、国会議員の資質と、歴史に対する基本認識に、深い憂慮を抱かざるを得ない。

 また、同法が通過すれば、国民の統合どころか、国民の分裂を招くことになり、ひいては日本との関係はさらに悪化するだろう。

当該議員らの歴史観に基づいて作ったこの法案は、初めから誤りである

 そもそも「歴史歪曲」とは、全国民が同じように受け止めるべき正しい歴史、すなわち「正史」があり、これを歪曲したという意味であるが、これは極めて恣意的で危険な設定である。周知の通り、歴史とは「公的記憶」の集合体なのである。「記憶の政治学(politics of memory)」という表現から分かるように、公的記憶とは「自明な事実の集合体」ではなく、公共の利益、あるいは公共の善のために構成と再構成を繰り返して作り出した人為的な産物である。

 したがって「自明な事実」というものは、はじめからあり得ない。ただ解釈があるだけだ。そして、この解釈には、当然誇張と歪曲が作用する。これは、過去に対して誰の記憶を「正統な記憶(authentic memory)」とみなし、また、どのような方法でそれを保存/・拡散していくかという問題に対し、特定の団体や国家権力が介入する余地が常にあるということを意味する。

 日韓両国が、歴史問題で対立を繰り返す核心理由も、記憶したい公的記憶の内容が異なり、これを作り出して消費する方式、つまり歴史を受け入れ、認識する方式に決定的な違いがあるからだ。そして、日韓両国が真の和解に進む道は、何よりも一国史中心の歴史認識から抜け出し、互いの公的記憶が異なることを認め、その違いの中で共有できる共通の歴史を見いだすことにあるのである。それが果たして可能かどうかは、さておきにして。

 歴史は、歴史には自明な事実などないということを前提とし、学者を中心とした市民が、多様な研究と討論を通じてその事実に接近するために努力した結果得られる多様な事実の集合体であって、一つの事実だけが歴史になることはあり得ない。したがって、一つの歴史だけを「正史」と考え、これと異なる歴史を主張したり扇動したりする人と団体を法で処罰するという、梁香子議員とその周辺の人々の歴史観に基づいて作ったこの法案は、初めから誤りである。

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