コロナ禍でも放送した「24時間テレビ」 日テレ内部ではどう評価されているのか
募金ランはキャスティングの勝利
ところが今回の「志村けん」は世帯で22・6%、個人13・7%と、世帯の数字は「阿久悠」に肉薄するほど伸びた。
「『24時間テレビ』のオープニングであるPART1の視聴率は17・7%で、例年より低い出だしでした。パーソナリティーの寄せ集め感や無観客、そしてマラソンのない厳しさが画面からも伝わってきていたので、頑張ったほうだと思います。ところが、午後9時からドラマ『誰も知らない志村けん』が始まると、視聴率が上向いたのです。『天才!志村どうぶつ園』のアーカイブ映像を使うなど、ドラマというよりはノンフィクションという内容でしたが、かえってそれが新鮮でよかったのかもしれません。また、志村さんの役はそっくりさんを起用しましたが、決して正面から撮影せず、後ろ姿と口元だけしか映さないなど、細かな配慮を見せた撮影方法も、高視聴率に寄与したと思います」(同)
そして番組は、マラソンの問題も乗り越えた。コロナ禍で中止となったが、それを逆手に取ったのだ。大スポンサーである日産自動車の追浜試走コースを使い、最高殊勲とされる“募金ラン”を行った。
「国民に人気の高い高橋尚子さんを筆頭に、野口みずき(42)、吉田沙保里(37)の両氏を加えて3人の金メダリストを並べました。そして土屋太鳳さん(25)をブッキングできた時点で勝負があったのかもしれません」(同)
地味なマラソンを好感?
ビデオリサーチの調査によると、今年の「24時間テレビ」を約8145万人が視聴したが、最高人数を叩き出したのは高橋尚子氏のインタビューで、何と約2066万人に達したという。
「直近で視聴率が最も好調だったのは2017年でした。世帯18・6%は歴代2位タイ、個人10・8%は歴代1位。メインパーソナリティーは櫻井翔さん(38)、亀梨和也さん、小山慶一郎さん(36)という3人で、マラソンはブルゾンちえみさん(30)でした。ちなみに世帯視聴率が好調だった時のランナーですが、05年の丸山和也さん(74)、07年のエド・はるみさん(56)という顔ぶれです。ひょっとすると、マラソンはあまり芸能界の大物が出ないほうが、実は視聴率がいいのかもしれませんね」(同)
ちなみに、視聴者数が発表されるようになったのは今年4月からだという。それにしても2066万人という人数は想像もつかないが、日本テレビの関係者は「もし05年、丸山弁護士がゴールインした瞬間に同じ計測が可能だったなら、3000万人を超えていたかもしれません」と言う。
あくまでも推測だが、日本テレビの関係者は「24時間テレビとTBSさんの『半沢直樹』(日曜・21:00)は個人視聴率が変わらないので、同じ2000万人くらいの視聴者が画面を見ていた可能性があります」と分析する。
日本テレビもTBSも地方に強く、全国津々浦々の視聴者が見る傾向があるという。「24時間テレビ」に関しては、それも視聴率が踏みとどまった追い風になったようだ。
いずれにしても、最大の勝因は“募金ラン”だったことになる。番組が放送される前はマラソン中止が懸念されていたことを振り返れば、余計に興味深いと言えるだろう。
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