「菅・麻生」が“利権”巡り共闘 東京への「金融センター」誘致を阻止する理由

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 一時期の沈黙がウソのような雄弁さなのである。少し前までは安倍総理との隙間風ばかりが報じられ、コロナ対策でも影の薄さが否めなかった菅義偉官房長官。7月22日に「Go Toトラベルキャンペーン」をスタートさせる前後から政権運営の前面に立つようになり、複数のテレビ番組にも出演し露出度を急増させている。また、もはや権力の階段の頂を目指すことへの意欲を隠すつもりはないようだ。先ごろ発売された「文藝春秋」9月号に掲載された「菅義偉官房長官すべての疑問に答える」にはこんなクダリがある。

〈これからのリーダーには、東京だけでなく、日本全体を引っ張っていけるような、判断力のある人物が求められると思います。/ただ、総理が「ポスト安倍」の候補として私の名前を挙げたようですが、リップサービスですよ(笑)〉

 もちろん、コロナ対応で失策を重ねた上、健康不安説まで流れる安倍総理に代わり、菅官房長官が強い指導力を発揮し、さまざまな難問を解決してくれるなら国民にとってはプラスに違いない。しかし、決してそうではないことを本誌(「週刊新潮」)はお伝えしたばかりである。8月6日号に掲載した〈「菅vs.小池」暗闘の裏に「湘南美容」コロナ利権〉という特集記事。東京五輪用の「プレハブ宿舎」で行う「新型コロナ治療」を、自らに近い「湘南美容グループ」に任せる。記事では、そんな菅官房長官の驚くべき計画についてご紹介したが、そこから垣間見えるのは、彼の「利権政治家」としての顔だった。そして現在、別の件においても疑問符を付けざるを得ない施策を進めようとしていることを国民はまだ知らない。今回のテーマは「香港」である。

「暗黒法」とも言われる国家安全維持法が施行され、中国政府による統制強化が激しさを増している香港。今月10日には、香港の民主化活動の象徴的な存在である周庭(アグネス・チョウ)さんが同法違反容疑で逮捕され、我が国にも衝撃が走った。彼女は翌日に保釈されたものの、世界が香港を見る目は大きく変化しつつある。そんな中、

「これまで『アジアの金融センター』として確固とした地位を築いてきた香港から金融関連の人材や企業などが流出する動きが出始めているが、菅官房長官はこれを好機と捉えている。具体的には、7月中旬以降、急遽、懐刀である和泉洋人・総理大臣補佐官に対して、『我が国への国際金融機能・人材の誘致策』について検討することを指示した」(政府関係者)

 香港から流出する人材や企業の受け皿を目指す。それが実現すれば、我が国に莫大なカネが落ち、雇用も生み出されるのだから正しい判断と言えるが、問題はその中身。菅官房長官がそこで下した具体的な提案の不可解さを理解するには、世界及びアジアの金融市場の歴史と実情を頭に入れておかなければならない。

「世界最大の金融市場はニューヨークで、ウォールストリートの株価や金利が世界の金融を動かしている、とも言えます。2番目に大きいのがイギリスのロンドン、3位と4位の座を香港とシンガポールが長年争ってきました。鉄壁の3位、4位という感じで、東京や上海などはそれらと大きく離されていました」(シグマ・キャピタルのチーフエコノミストの田代秀敏氏)

 香港が強かった理由は、

「世界中のお金が集まる仕組みがあったからです」

 と、田代氏が続ける。

「まず、相続税と贈与税がなく、金融取引に関する税金もかかりません。さらに、共同名義口座といって、赤の他人同士でも口座を共有できる仕組みがあります。これによって財産を共有して自由にお金の出し入れをすることができるわけです。例えば、愛人との共同名義の口座を作れば、税金なしで誰にも知られず大金を渡すことができます」

 富裕層にとって実に都合の良い仕組みが整っているのである。それゆえ、

「世界中のお金持ちのカネが集まるので、世界中の銀行が香港に支店を出すわけです。つまり金融市場が大きくなるためには、税金から逃れられる何らかの仕組みを作り、世界中からお金を集めなければならないのです」(同)

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