実は「太陽にほえろ!」にも出演していた渡哲也さん 出演理由も人物設定も泣ける話

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 2020年7月10日、俳優の渡哲也さんが肺炎のため亡くなった(享年78)。

 そのニュースを観ていると銀幕のスターから「西部警察」の“大門団長”の話、もしくは渡さんが出演していた宝酒造のCMの話題が多かった。だが、である。渡さんは「西部警察」と並ぶ人気刑事ドラマにレギュラーで出演していた過去があるのをご存じだろうか。

 その刑事ドラマとは72年7月21日のスタート以来、実に14年7カ月もの長きに渡って日本テレビ系で放送された刑事ドラマの一大金字塔「太陽にほえろ!」である。「太陽にほえろ!」は、石原裕次郎が演じる“ボス”こと藤堂俊介係長を中心に同僚たちをニックネームで呼び合う警視庁七曲警察署(新宿区にあるという設定)の捜査一係の刑事たちの活躍を描いた作品で、当然ながら渡さんは番組開始当初からのレギュラー出演ではない。彼が初めて登場したのは1986年8月8日放送の第706話「ボス! 任せてください」である。

 出演の経緯はこうだ。実は記念すべき第700話「ベイビー・ブルース」からボスを演じる石原が2度目の病気療養のため、番組から離れることになった。

 ここで「太陽にほえろ!」のことを多少なりともご存じの方なら、ボス不在の際の一係は露口茂が演じる“山さん”こと山村精一が留守を預かる形になるんじゃないかと思ったはずである。警部補の山さんは実質的なNo.2だからだ。

 しかし、山さんはボスが病欠する約2カ月半前に殉死している。この山さん殉職編は、春改編の目玉であったのだ。

 これでお分かりだろうが、要は第700話から第705話までの約1カ月半は一係にボスも山さんも不在という超異例の事態となってしまったのだ。

 この間は地井武男演じる、ベテランの巡査部長で山さん殉職後は一係の実質的なNo.2となっていたトシさんこと井川利三が捜査を取り仕切る形となっていたが、このトシさんを含めても一係のメンバーは6人しかおらず、寂しい状態となっていた。

 いわば“緊急事態”である。そしてこのピンチに立ち上がったのが誰あろう、渡哲也その人だったのだ。この出演自体がいかにイレギュラーなことだったか。何しろ第706話の仮のサブタイトルは当初、「DJ刑事登場!」だったという。

 DJ刑事とは、この回から登場する新人刑事・西山浩司が演じる太宰準のことである。そこに急遽、渡さんが加わる形となった。文字通りの緊急レギュラー登板だったのだ。

 これまで「太陽にほえろ!」では新人刑事が登場する回は「○○刑事登場!」というサブタイトルがお馴染みだったが(トシさんこと井川利三の登場回だけ「井川刑事着任!」であった)、この第706話では一気に2名の加入となり、サブタイトルも新人刑事登場回にしては珍しく「ボス! 任せてください」となったのである。

 ここで少し話は逸れるが、渡さんと西山が登場したこの706話から、ファンとってはお馴染みのメインテーマも大幅にアレンジされたことも紹介しておこう。

 あの「♪~チャラチャー、チャララ、チャララ、チャララ、チャチャ、チャララ~」という出だしの曲が、当時流行りの“打ち込み式”に変わったのだ。

 さらにこのメインテーマとともに画面に流れるタイトルバックも大幅に変更された。なかでも最も大きかったのが、最初に出てくるボスの紹介映像だろう。

 最初に石原が大病を患って番組から長期離脱した81年5月末から同年12月半ばまではボス不在でもその人物紹介映像は残されていたのだが、この一新されたオープニングでは最初に登場するボスのポジションに渡さんが組み込まれ、ボスはカットされてしまったのである。

 ただ、それでも制作サイドはどこかにボスの存在を残しておきたかったのだろう。オープニングラストで延々と流れる、ボスの一人歩きシーンを渡哲也バージョンにすることはしなかった。この場面は1つ前の歩きバージョンの流用となった。こうしてオープニングに石原が残る形を取ったのである。

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